2017/12/16 10:30 午前

スルー・ジ・エイジズ。遊んでくれよ、このゲームを!

  • 2016/08/18 09:07 午後
  • 投稿者:


https://sites.google.com/a/newgamesor...h-the-ages

スルー・ジ・エイジズが今朝倉庫に入荷、致しましたー!と言っても自分が倉庫に駆け付けた時刻(8時半)には既に来ていたのでした(事前アナウンスでは9時着荷)。
完成品を確認して、自分で予測していた以上の感慨がありましたねえ。本当になってるよ、日本語版に!来たよこれは!
(何か国語もで相乗り製造されているので、本当に日本語カードが入っているのか…という一抹の不安もあったのですが)

え~、確か「スルー・ジ・エイジズ」をご存じないという方にもその内容等しっかりとご紹介するといったようなお約束を、
前回のブログで書いていたような気がします。
しかしながら、本日の激烈出荷作業等々により、若干私体力気力に限界近づいていて今ちょっと全ては難しいので、
結論としましては書きたいことを書きたいように、書きます!

そもそも自分がこのゲームのことを知ったのは、B2Fゲームズを始めて間もない頃、10年近く前(2006年ごろ)でした。
当時の自分は正直ボードゲームの知識がほとんど無かったといっていい状態でしたが、その頃中学時代からの私のゲーム仲間であり、
今なお色々(NGO界隈でもボードゲームの翻訳やパラノイアトラブルシューターズの翻訳や東京ドイツゲーム賞審査員等)
活動している私の指南役、沢田くんが「最近はドイツの新興メーカー、さらに他の国からも面白いボードゲームが出てくる時代になってきている」
といったことを力説していたのを、「へ~そんなもんなんですか~」と聞いていたのでした。その時名前が上がっていたのが、
マック・ゲルツのデビュー作「古代」、フランスの新興メーカー・イスタリの「ケイラス」、そしてチェコのブラーダ・フヴァチルの「スルー・ジ・エイジズ」。
今考えても2000年代前半からのドイツメジャーメーカーの停滞の後にやってきた2005年以降の流れを象徴したようなタイトル群を挙げていたので、
沢田くん先見の明ありましたねえという感想も沸きますが、当然ながら彼だけでなく、日本国内でいち早く面白いゲーマーズ・ゲームを遊ばんとする
(多分当時総勢100人くらいだったのではないかと推測される)コアゲーマーの皆さんのご慧眼と、
当時これらのゲームを大方ラインナップしていたゲームストア・バネストの中野さんのお力は大きかったと思います。
ほどなくこれらのゲームを遊んで「実際凄い!」と感動した私は、中野さんと電話で色々とお話して、
「こういった特に力のあるゲームを大きく売り出して、広めていかないんですか」と質問したところ、中野さんからは
「どのゲームに力があるかを決めるのはバネストの役割ではない、それはプレイヤーの皆さんが判断されることですから、バネストはその選択肢を並列に作り続けます」
という凄みのある内容のお返事をいただきました(お答えそのままではないですがこういう内容だったと認識しています)。
この答えを受けて私は、
「私達は逆に、『自分たちはこういうゲームが面白いと思う』という自らの価値判断を前面に押し出して、
自分たちがこれと思う、確信のあるラインナップを作って、ゲームを広めていくアプローチを取りたいと思います」
と申し上げました。
中野さんからは「お互いの考え、役割に沿ってやりましょう」というお答えをいただきました。

…10年経ちましたねえ。どうにかこうにか、ギリギリですが、お互いまだやってますね、中野さん(笑)。
私たちは、イスタリには縁が無かったと言えますが、「コンコルディア」等、より思い入れの深かったゲルツのゲームを取扱い、
そして今、多くのボードゲーマーにとって「特別な存在」「憧れのゲーム」だった「スルー・ジ・エイジズ」の日本語版(!)の発売に至りました。
こういった2000年代中盤の大物ゲームの中でも「スルー・ジ・エイジズ」がより求心力を持った理由はおそらく、
これを入手し、存分に楽しむうえでは障害となった、複数の問題からでした。

1つには、何といってもテキストが書かれた大量のカードがありました。
どうにかこうにかかじりついて遊んだ人たちからは「それはもう桁違いに面白かった」という噂が聞こえてくるものの、遊ぶための苦労、手間は並ではなかった。
バネストさんが作られた和訳シールに頼り、また有志で訳を拵えたりといった中で草の根で遊び継がれましたが、
もう一つの大きな理由、当時のドイツゲームの常識でいうと例外的なプレイ時間の長さもあり、なかなか十分に遊びつくせる面子を集めること自体が難しく、
とても外に波及する状態ではありませんでした。現在に比べればはるかに国内ボードゲーマーの数も少なく、
インターネットも今ほどは社会全体に浸透していなかったため(SNSはほぼ無いか出たて程度だったのではないでしょうか)、
当時の日本でのスルー・ジ・エイジズは、コップの中の嵐。ただし局地的ではあっても激烈な嵐でした。

現に、小規模ながら独自にボードゲームを入荷販売し始めたB2Fにも、「スルー・ジ・エイジズを!」という声は非常に多く届きました。
その大きな要因は、沢田くんの勧め(というか要望)にしたがい、フヴァチルがチェコのパブリッシャーでのみ発表していた「グリーンランド」を
独自に輸入したことが大きかったかと思います。

http://www.tgiw.info/2007/02/b2f.html
(↑当時のTGIW様の記事!懐かしいですねえぇ。)

これはボードゲーム界隈におけるB2Fの初仕事と言え、たしか50個程度の入荷ではありましたが通販の注文もどんどん来て、非常に嬉しかった覚えがあります。
自分たちとしては「流石にスルー・ジ・エイジズは長すぎるのでグリーンランドがいいなあ」と話していたんですが、
お客様からは、「ホップ、ステップ、で最終的にスルー・ジ・エイジズ、ですよね!」と掴みかからん勢いで言われたのが記憶に新しいです。
本当にもう、拝み倒す感じで「くだせー、スルー・ジ・エイジズくだせー!」みたいな(笑)。
それでもあの時は、どう考えても、夢のまた夢でした。何もかもが無かった。
ニューゲームズオーダーは、(そういう方向への気持ちこそありましたが)具体的な計画すら無かった時期です。

あともう1つ、原語版自体が、作者と権利を持つパブリッシャーの間で何等か揉めた経緯があり、スルー・ジ・エイジズの再販、増刷といったことが、
(その世界中からの需要に反して)長年にわたり順調でなかったことが、ボードゲーマーの気持ちをことさら募らせた部分はあったと思います。
再販があったりしてもどこか細々とした形に留まり、「結局今スルー・ジ・エイジズはどうなってるの?」というのは、
ベテランゲーマー間でも折に触れ出てくる話題でした。

そして数年の空白の時を越え、俄かにその名前を思い出すことになったのが、2015年エッセンを前にしての、
「チェコゲームズエディションからのスルー・ジ・エイジズ再販」のニュースでした。
近年のフヴァチルのゲームは、彼自身が参画しているこのパブリッシャーから軒並み出版されていましたから、
これはすなわち、スルー・ジ・エイジズの権利問題が完全にクリアになったことを意味しました。

この知らせを受けて、自分はすぐに沢田と相談しました。どうする、と。

2015年の国内ボードゲームの状況は、数年前からは激変していました。
ホビージャパンさんやアークライトさんといった大手ホビーゲーム企業が本格的にボードゲームの日本語版出版に参画されたことで、
今や多くの新作ボードゲームが「日本語版を入手できる」ようになっています。2006年から振り返ると驚くべきことですが、
今回のスルー・ジ・エイジズも、自分たちがやらなくても、何らかの形で日本語版は出版されるだろう、という予想がありました。

ただ、ローカライズのクオリティがいかに確保されるのか。問題はその一点だと、私は考えました。
このゲームは、桁違いの面白さの反面、しっかりしたローカライズの土台を持たなければその真価を発揮できないことは、明らかだからです。

今回スルー・ジ・エイジズの日本語版制作にあたっては、まず沢田がルール・カードの翻訳をし、ここに校正の山根が修正を入れ、ここで挙げられた(無数の)議題について、
私と山根が協議しながら、この協議の結果を関が即座にDTPでルールやカードの原稿に反映する、これを完成するまで延々と続ける、という、
ニューゲームズオーダーの基本となる作業体制で行われました。
結果としては、校正から原稿の完成には、まる2か月の時間を要しました。
改めて思ったことは、

「ヘビーゲームのローカライズは本当に辛い」

ということです。率直に申し上げて、収益性の面から、分が悪過ぎる。正確に言えば
「日本語版出版には商機があるが、商業的に最適化したければ、手間をかげず『一応日本語になってる』くらいに留めた日本語版を作った方がまだしも儲かる」
ということです。何が厳しいといって、
「ローカライズの精度・出来を上げても、(ブランドイメージの向上にはつながっても、少なくとも短期的には)売り上げ増にはほぼ繋がらない」という見方ができることです。
「日本語版がこんな出来なら、英語版を買うよ!」と言って実際にそうできる方々(仲間内みんな英語版でも遊べるようなベテランの方々)は、
実際日本語版が出る前に最速で原語版や英語版を買って遊ぶ選択肢を持った方々なのです。
そういった方々が「どれが次に買いなのか」ということを他の多くの方々に知らせる機能を持ち、その情報を受けたより多くの方々が日本語版を買う。
そういう流れで今日本語版のヘビーゲームが購入されている、という大まかな認識を、私は持っています。

ヘビーゲームですから、価格も安くないそれを買おうという方は、それはもうそのゲームを明確に遊びたいと感じて買うのです。
そのゲームのローカライズの出来が悪ければ、当然ながら落胆も批判もするでしょう。当たり前です。
しかしながら、それでは売り上げ数が変わるのか、というと、(残念ながら)目に見えては変わりません。
批判は既に買った方々が中心となり起こるものですし、仮にローカライズの悪い評判を聞いても「プレイ時の苦労をいくばくか覚悟しつつ買う」
という行動に至る方が多数派だと思います。ローカライズの出来で、自分が購入するゲームのオーダーを大きく変える方は多くないはずです。

率直に申し上げて、ホビーゲーム各社のローカライズのクオリティは「場合による」という認識を、私は持っています。
全部駄目ということはないが、全部良いということもない。非常に多くのゲームが出版されていますから、担当した方の作業クオリティにもよるでしょう。
予算枠にもスケジュールにもよるでしょう。
本当にありがたい、助かる!ということも多いが、うーむこれは、ということもなくはない。
しかしそのローカライズ、総体としてやってほしいか、やらないほうがいいかと言われれば、ほとんどの方が、勿論やっていただきたいということになるはずです。
私たち自身、自分たちの会社としては定番旧作出版に専念し、新作チェックにほぼ労力をかけなくても後から日本語版で確認できる現状には、大きなメリットを感じています。

ただ、スルー・ジ・エイジズについてだけは、日本のボードゲームコミュニティは最善を尽くすべきだと、私は考えました。
率直に申し上げて、じゃあニューゲームズオーダーが日本語版を手掛ければ、間違いなく出来のいいスルー・ジ・エイジズが手に入るのか、と問われれば、
自信を持って「勿論です」と答えることはできません。今なお、確信を持ってはいません。そもそも、きわめて難しいのです。
大判の12ページのルールブックに加え、初プレイの人用のハンドブックが24ページ。
しかもこのハンドブック、エッセンでの初売り時にはチェコ側が間に合わせられず封入されていませんでした。
(私たちがハンドブックのPDFを入手したのは相当後、日本語版入稿の締め切りギリギリの時期でした)
それ以上に、300枚超のカードのテキストをミス無く訳し、(原語版でも問題を抱えているかもしれない)用語の統一を図り、
元版から遊んでいる皆様のご理解を得ながらも、新しく遊んでみたいという方々にも門戸を開いたスルー・ジ・エイジズ日本語版を得る、ということは。

しかし明らかなのは、そのことの必要性を誰より感じ、自らが直接その為に力を尽くすことができ、自ら出版の資金を負担し直接的に生活を賭ける立場に立ちうるのは、
今この日本で、私達をおいて他にはないということでした。

今スルー・ジ・エイジズが、コップの中の嵐でなく、あの頃より遥かに増えた国内ボードゲーマーの皆さんの中心に、生じるのか。
やはり生じないのか。それを知りたい。それは10年越しの問いです。
そして、ゲームの魅力自体でない理由でそれが生じなくなるとするなら。それは悔しい。
なんで自分たちがこうしているのかわからない。だから手を挙げようと。

儲かるかは?儲かるように、力を尽くします。ホントのところ勝算があるわけではないですけど、売れなきゃ終わりですからね(笑)!

客観的に考えて、今日本のボードゲームコミュニティが選べる、現実的で勝機の一番ある選択肢は、ニューゲームズオーダーなのだから、
ニューゲームズオーダーというカードを切ろうと。限りあるカードだが、ここは切ろうと、そう考えました。
予想通り、複数の会社が日本語版出版に手を挙げた、ということを先方から聞き及びましたが(考えるとそのシチュエーション自体が凄いですね)、
結論としては、ニューゲームズオーダーが日本語版を出版する運びとなりました。
余談ですが、後日すごろくやさんの10周年記念のパーティの席でホビージャパンのボードゲーム責任者、会田さんに
「スルー・ジ・エイジズはニューゲームズオーダーさんに頼むことになったってチェコゲームズエディションから連絡あって、びっくりしましたよ!凄いですねえ!」
と笑いながら言っていただいたのも、嬉しいことでした。
僕らは本当はルール短くて売れそうなコードネームの方がやりた…(笑)、という話はいいですね!

一点。今回入荷したスルー・ジ・エイジズは、1500部となっております。
チェコ側とは、これで形勢を計ろうじゃないかと、そう話し合いました。
多すぎるのかもしれません。でも、少なすぎるのかもしれません。
10年前なら、とんでもなかったですね(笑)。でも今は、これでは少ないのだと思いたい。
そうしたらまた、お時間はいただきますが追加で製造して、スルー・ジ・エイジズ、売り続けたいと思っています。
ニューゲームズオーダーの今後を占う上で、このスルー・ジ・エイジズに賭けてみてしまいます。
いやあね。本望だね!

ということで皆様、どうぞ遊んでみていただければ幸いです…、ってゲーム内容ほんっとーに何も言ってませんけど、
たぶん熱心なプレイヤーの皆様がご紹介などされてると思います。
すいません、各自調べてください(笑)!


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