2017/11/20 06:18 午前

ババンク日本語版の話、その2。

  • 2017/11/09 09:10 午後
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数日の間が空いてしまいましたが、ババンクのお話の続きと行きましょう。
復刻するのが難しい部類に入るババンクの日本語版を、それではどうやって形にしていくのか?というお話です。
今までやっていなかったもしれませんが、ローカライズの時に私たちが何を考えているのか、
ということについて、ちょっと率直な所をお話してしまおうかと思います。

前提として、あるゲームを復刻する時に、その難度について私がどういった所を気にするかという話と、
その基準の中でババンクがどう位置づけられるかということをまずご説明しましょう。

●元ゲームの知名度、人気
●元アートワークとの距離感。変更するか否か
●内容物の「作り易さ」
●内容物の「魅力、工夫しがい、伸びしろ」
●元版製品の出来栄え
●過去の国内供給量の多寡
●ゲーム内容と価格設定のバランス
●契約の可否と条件
●現状ボードゲームを遊ぶ、あるいは近く遊び始める方々にどう受け入れられるか

項目にするとこんなことが挙げられます。ババンクはというと、ざっくりと以下の通りです。

●知名度、人気…知る人ぞ知る名作、という位置づけ。長年絶版だったため、知っている人の割合は、このタイトルの元版出版時の人気に比べ随分低いように感じる。良し悪し。
●アートワーク…なんと「フェレータ」のカサソラ・メルクルが描いていたもの。経験上、まず間違いなく元のアートは入手不可能。
●作り易さ…プラスチック製チップ60個、木製ポーン6個+紙コンポーネント。シンプルなようでチップ60個は大量。非常に厳しい。
●魅力…値打ちを感じさせる内容物はほぼチップで占められている。これの取り扱い次第。
●元版の出来栄え…アートワーク、内容物とも評価は比較的高い。元版のコンポーネントで不満を耳にしたことはほとんど無い。
●過去の供給量…知る限り他言語版は目にしたことは無く、供給量も少ない。中古価格は高い(ぱっと見た限り100ユーロ近辺)。好材料。
●内容と価格…実はがっちりとコストがかさむチップ60個に対し、ゲーム時間は1時間かからないためそう高く出来ない。難点。
●契約条件…ユーロボードゲームの普通の範囲。ニュートラル。
●どう受け入れられるか…勝負所。満場一致で大歓迎ということはないが、凄く喜んでくれるタイプのプレイヤーも十分想定できる。


大体こんな感じです。
ここから総合的に判断していくと、

●間違いなく底力のあるゲームで、リリースできればある程度勝負できる
●元版の出来は評価されていたため、元版に劣る物を作ってしまうリスクがある
●コストパフォーマンス、元版原稿の保存/確保の観点から、元版を忠実再現することはできない/すべきでない

ということになります。
大きくわけて「アートワーク」と「コンポーネント(専らチップ)」が問題になったのです。
加えて「内容物のコストと販売価格のバランスを取るのがかなり難しい」という観測があります。

少し詳しく説明しますと、これは確認したわけでは無いですが、カサソラ・メルクルは、
元より几帳面に過去の仕事のデータを管理している人ではない、ということを、
過去の『エレメンツ』『フェレータ』『ジュリエットと怪物』のローカライズの経験で知っております。
ババンクは2001年作で、カサソラ本人のゲームでも無いですから、残ってなくても何らおかしなことはない。
そしてもう1つ、チップです。元版のチップというコンポーネントは、こんな感じの物です。



言いようによっては銭湯とかで見かけそうなプラスチック製の楕円形の札なのですが、
これが手触りや質感も良く、結構使いやすいもので印象深かったのです。
私達自身も、ババンク再版に着手する上では「あのチップを再現する必要があるってことなのかなあ」とぼんやり考えていました。

しかしながら、改めて進めてみると、この「再現路線」はなかなか筋が悪いな、と思えてきました。
推測するに、元版のチップも「このゲームの製造にあたって開発した物」というよりは、
「製造現場周りで入手できるものとしてたまたまあって、『ちょうどいいじゃん』と採用したもの」だったんだと思うのです。
実際ゲームを作っていると、こういったことは現場で頻繁に起こるので、おそらくそうなんじゃないかと。

しかし、当時結構な定評があったチップなんですが、改めて良く見ると「そのものズバリ」という代物ではないなあと思い始めてしまいました。
(自分を含めた)オールドファンは「そう、これこれ」と思うとしても、それは元のババンクを知ってたり、
もっと言えば持ってたりする人の感覚に限られるのでは…、と。
これだけ多くのボードゲームが出版されてきた上での、2017年現在の大半のボードゲーマーの皆さんには
「ああ、そうなんですか」位の感想しか抱かせないんじゃないかなと。
その割にはプラスチック製ですからコストもかかりますし、極力元版に寄せていったところで
「似せたんだろうけど元の方が良いね」と言われてしまう可能性も高い。
ここまで考えて「こりゃいかんなあ」と悩みに入りました。コスト高なのに大して受けないのでは散々です。
実際は、コストを掛けてリスクを取るのだとしても、このチップを「別のもの」、さらに言えば「もっと良いもの」にしなければならない。
好みは人それぞれあるにしても「元版とは違うけど、これはこれでアリだね」という最低線は保たねばならないのだなと。

この上で自分が突破口と考えたのは2点でした。

●元のチップより「カジノらしく」する
●元のチップより「便利」にする

元のチップは定評がありましたが、これは例えばより「カジノチップ」的なものでも良いのではないかな、という発想がありました。
もう一つあったのは、「プラスチック製ではなく、木製にするという手はどうだろう」という発想です。
リアルなカジノチップか、具合の良い木製駒か…というところで思案しつつ、並行してアートワークを(カサソラに比肩するアートワークを)
依頼することにしたタンサンさんにご相談し話し合っていた所、朝戸さんから

「円柱の高さとチップの価値を比例させてみるのはどうですか?」という提案がありました。…それだ。

ババンクのチップ60枚は、

「5」チップ 24枚
「10」チップ 18枚
「20」チップ 12枚
「50」チップ 6枚

という構成だったのですが、これを

5㎜厚チップ 24枚
10㎜厚チップ 18枚
20㎜厚チップ 12枚
50㎜厚チップ 6枚

とする手。これを「カジノチップを積んでいるような円柱」に見立てる!
50mm厚って要は高さ5㎝の円柱ですから、「50㎜高」と言った方が正確な物ですが。

これのメリットは「テーブルに乗っているチップの総額が高さで一目瞭然」となることです。
元のチップと比べても、絶対的に便利。その上、十分満足感のあるコンポーネントになる。
カジノ感も出るし、最高だ!…と思ったのですが、一点大きなハードルが生じたことに、すぐ気づきました。

「でもそれ、多分めっちゃかさばるよねえ…」という問題です。

ゲームの内容とプレイ時間、加えて初版販売時に流通していた価格とのバランスから、
自分は今回のババンクについて、「上限5000円」もっと言えば「税抜4500円(税込4860円」、
つまり弊社で販売している『ラー』『さまよえるオランダ人』の価格と並べるという課題を設定していました。
『ラー』の価格に並べるということで、同時に『ラー』と同サイズの箱にする、ということを想定していたのです。

カジノチップ気分を味わうためには、円柱があんまり細くて良い訳はない(そもそも倒れやすくなってしまう)ということを考えると、
直径は20㎜…いや25㎜くらいは欲しい、のか?
直径25㎜で5㎜厚~50㎜厚の木製駒?計60個?をジップ袋に入れて、それをラーの箱に入れる?他の紙コンポーネントと一緒に?

…それ、収まるか?


と、とりあえず目の前に無い60の円柱について考えてもそうそう答えが出るわけもなく。
暗澹たる気持ちになりかけたのですが、そこでふと思い至ったのです。
製造方の西山が最近導入していじり始めていた、「3Dプリンタ」が使えるんじゃないかと。

…ということで早速西山に状況を説明すると有難いことに「多分ダミー作れるよ、出力に数日もらえれば」という話。
おお!未来っぽい(笑)!

という所で、タンサンさんとのイメージ共有も含め、3Dプリンタの実用性テストも含め、ダミーの作成に着手することになりました。
西山が導入し始めた時は「ミニチュア造形関連の実験か~」と眺めていたんですが、意外と地味な所で繋がってくるもんなのですねー。
文明文明。

ということで、次回はその結果できたチップのご紹介を(ようやく)しようと思っております。
多分次回、ババンクの話は締められまーすー!

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