2017/12/15 02:07 午前

パトロネージュのお話、その1。

  • 2017/12/01 05:01 午後
  • 投稿者:
 


ババンクと共にゲームマーケットで新発売する予定の第2回東京ドイツゲーム賞・ニューゲームズオーダー特別賞受賞作品、
「パトロネージュ」につきまして、今週に入りようやく、弊社倉庫にて先行販売分の準備が整いました。
制作に様々な課題がありご心配おかけしたのですが、何とか!当日販売できることとなりました。
いや~、かつて無い程の難産でしたので、仕事が終わったわけでは全く無いながら、肩の荷が一つ降りた気分です。

と言っても、ババンクと異なりパトロネージュは全くの新作ゲームとなりますので、ご存じ無い方もたくさんいらっしゃることと思います。
順を追って説明してまいりたいと思います。


■第2回東京ドイツゲーム賞・ニューゲームズオーダー特別賞受賞作品

2012~13年に第1回を開催した、テンデイズゲームズさんとニューゲームズオーダーが共同開催している公募のゲームデザインコンテスト、
「東京ドイツゲーム賞」は、2016年に第2回を開催しました。
第1回についても「枯山水」「曼荼羅」と言ったゲームの出版に繋がり、私達自身嬉しい驚きをたくさん味わったのですが、
第2回については、ともすればそれを上回る衝撃がありました。
第1回の約60作の応募に対し、第2回は約40作となりましたが、応募数の減少に相反して優れた作品が非常に多く、
審査では嬉しい悲鳴が度々上がりました。
審査に当たっては、一次は書類審査、二次では応募者の皆様にお作りいただいたプロトタイプを用いての実プレイ、
これを踏まえ特に良い物を最終の三次審査にかけ、再度のテストプレイと話し合いで大賞および各賞を選出しています。

そんな中、二次審査終了の時点で、力作ぞろいの作品群の中、なお頭一つ抜きんでた評価を得たのが「パトロネージュ」でした。
平易かつ理性的なルールで1時間級、考えさせつつも楽しく熱く盛り上がる。
ルネサンス期の、歴史に名を残す芸術家や作品、メディチ家のパトロンたちをテーマに取った、王道といって良いゲームながら、
今まで見たことのあるユーロボードゲームとは言わば「哲学の違い」を感じさせるゲームデザインに、
うーんこれは凄い、と私たちは喝采の声を上げました。

現在ニューゲームズオーダーのウェブサイトにルールブックをアップロードしています。
よろしければご覧ください↓
http://www.newgamesorder.jp/games/patronage

…と言って、こちらのルールブックは本作のゲームデザインの半分でしか無いのですが。
未だ皆様にお見せしていない「もう半分」にこそ、自分達の知らないゲームデザインの力が宿っています。
それは、最終的に175枚を数えたカード・セットの内容です。



■作者、山田大夏さん

二次審査で初めて遊んだ「パトロネージュ」の出来栄えは、私にとって完全な驚き…というわけでは実はありませんでした。
それは(間接的にではありますが)作者の方の経歴を存じ上げていたからです。
「パトロネージュ」の作者山田大夏(ひろなつ)さんのご本業は「TCG(トレーディングカードゲーム)のデザイナー」です。
そう言われてみると私たちは、数多く出版されてきた国産TCGのルールを誰が作っているか、多くの場合知らないわけですが、
山田さんは国産TCGの黎明期から、20年にわたりゲームデザインで生計を立てていらしている、
つまり専業のゲームデザイナーの方、ということでした。
(B2FGamesを作る前はイエローサブマリンのTCG店舗にもいたことのある自分としては、
 「『アクエリアンエイジ』の中核デザイナーのお一人」という話を聞いた時には「えっ」と声が出ました)

西山が依然在籍していた玩具企画会社に山田さんもいらっしゃったため、西山から話を聞いておりまして、
その山田さんが「TCGとは違う、ヨーロッパスタイルのボードゲームを一度しっかりと作ってみたい」ということで、
第2回東京ドイツゲーム賞に応募していらしたということです。

「…バリバリのプロじゃないですかー!」という感想は思わず出たのですが、実の所東京ドイツゲーム賞はプロアマ不問なので。
面白いゲームをご応募いただける可能性の高い方なら大歓迎でしたので、応募をお受けした所、それがこの「パトロネージュ」でした。
間違いなく非常に高いレベルにある作品だったわけですが、沢田と私は
「このどこを切っても『熟練』というレベルの出来のゲームに大賞を贈るのは、
 (新人賞的な趣がいくらかある)東京ドイツゲーム賞としては果たしてアリなのか」
という、賞の意義を問い直すような話を、二次審査の段階で早々に始めていました。
この一点を取っても、第二回東京ドイツゲーム賞の審査は終始このゲームを中心に進んでいたのです。


■ニューゲームズオーダー特別賞

「本命、パトロネージュ」という印象が頭から離れることはありませんでしたが、二次審査では他にも数多くの多種多彩な有力作が現れました。
結果、当初予定した5作品から大幅に上回る8作を通過作とした上、私たちは最終審査に臨みました。
最終的に大賞を獲得したのは赤瀬よぐさんの「グラバー」であり、
「パトロネージュ」はニューゲームズオーダー特別賞ということになりました。
この点はYoutubeにアップロードしている最終審査の話合いで侃々諤々と話しておりますが、理由は2つで、
「最終審査でのパトロネージュのテストプレイにおける(全審査を通じて1回だけの)パフォーマンスの低下」、
そして「『グラバー』のゲームデザインの『若々しさ』を審査員が高く評価したこと」でした。
私としては、もう一つの弊社特別賞受賞作「探偵稼業」を含めこの3作は、「間違いなく自分の『責務』になる」と捉えました。
皆様のテーブルに良い形でお届けできるよう、預からせていただきましょうと。
しかし加えて「ハツデン」もあり、「六次化農村」もあり…と、
東京ドイツゲーム賞の優秀作だけで2017年の予算と日程は全埋まりと言ってよい状態になりました。
一つでも多くの作品の出版を実現すべく「ハツデン」「六次化農村」から着手し、春にはリリースをしたわけですが、
では次はどの作品の制作を…、と考えた末、「パトロネージュ」を始めよう、という決断に至りました。
直接的な理由は、最終審査時に私がこのゲームの行く末について持っていた推測と、その推測に対する回答を、
ゲームマーケット17春の現場で作者ご自身からいただけたことにありました。

最終審査の話合いで大賞が「グラバー」に決まりかけた時、私は
「パトロネージュの作者の方は、この最終審査で1度限り起きたパフォーマンスの低下を、
 あるいは完璧に『直せる』方なのではないかと想像している」
という向きのことを言ったのです。

ゲーム作りを1度でも志した方ならおわかりのことと思いますが、ゲームをほぼ完成させて、その最終形で生じた欠点と言うのは、
言うほど簡単に取り去れるものではありません。1つ直そうとすると新たに2つ3つのおかしな部分が生まれて、
その内原型を留めなくなってしまいます。
手直しを重ねるうち、「そのゲームが当初現出させようとしていたもの」が、損なわれていってしまうこともしばしばです。
しかしそれは、この方に限っては当てはまらないのではないかと。
この方は、「私たちの本業」に等しい力で、ゲームのルールと長年向き合って、生きてこられたわけなので。
それは生半可なことでも、尋常なことでもないと、私は思うのです。

上記のことは、無論山田さんの経歴からの想像だけで言ったのではありませんでした。
パトロネージュの底に潜む、尋常ではないゲーム作りへのこだわりが、審査を通じて伝わってきていたのです。
ルールをご覧いただいた方ならある程度ご想像頂けると思いますが、このゲームは最終的に運要素も小さくない、楽しくネアカなファミリーゲームです。
「なんだ運ゲーか」なんていうファーストインプレッションも、もしかしたら言われるのかもしれません。

ここで自分が申し上げたいことは、
「こういったタイプのゲームを作る為に、ここまで緻密にこだわってルール・カードのメカニクスを追求する人を見たことが無い」
ということです。
パトロネージュのメインカードには、TCGのようなテキストは無く、アイコンだけでシンプルに表現されているのです。
ほぼ言語依存の無いゲームです。ただ山田さんは、その全体と細部の両輪に、ひたすらにこだわられる。
その飽くなきこだわりが、ゲームプレイの快適さや展開の盛り上がりにダイレクトな効果を上げています。
口にしてしまえば単純です。それとなく遊んでいればまず気づかないような領域で、出来上がりが全く違うのです。
これは是非とも遊んでいただいて、ご判断いただきたい部分です。

二次審査において関係者全員が「パトロネージュ」を称賛した中、最も高く評価し敬意を表したのは、自分だったと思います。
だからこそ、最終審査においてより厳しく見るためのテストプレイをしたのです。
提出されたパトロネージュの僅かな、しかし確かな欠陥を見つけたのは、自分です。
そしてそれを一番残念に感じたのも、おそらく自分です。

だから、最終審査において、それまでの方向性を曲げてでもと、ニューゲームズオーダー特別賞を
「探偵稼業」「パトロネージュ」の二作に贈ることとさせていただいたのです。
審査以降、「パトロネージュ」と縁が無くなるようなことがあれば、「パトロネージュ」が理想的な形で出版されて、
多くの人を楽しませることに、自分が関われないこととなる。このゲームの凄さを最も明確に認識している自分こそ、
同時にそれを皆さんにお届けする適任者であると考えましたので…それはよくない。
この作品とボードゲームを愛する皆様を繋ぐには、私に担当させていただくより他は無いと、私は確信していました。

上記のように考えていましたので、ゲームマーケットで審査後初めて山田さんにお会いするや否や、挨拶もそこそこに、私は山田さんに尋ねました。
「あれは、直せますか」と。これは、私の中で強い願いを込めた問いでした。

回答はきわめてシンプルでした。

「直せます」

山田さんは、平然とした顔で即答されました。

「4つの方法があります」

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というところで、1回切りたいと思います(笑)。
実際のゲーム作りの話に全く入っておりませんが、本作についてご判断いただけた部分があるかと思います。
続きはできれば今日もう1回書きますが、間に合わなければゲームマーケット後に書きたいと思います。
ともあれ「パトロネージュ」、心からお勧めします。
よろしくお願い致します。

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