2018/08/18 11:42 午前

グラバーの話、の前置き。

  • 2018/04/17 09:01 午後
  • 投稿者:


さて…、先日Twitterにてお伝えした通り、第2回東京ドイツゲーム賞大賞受賞作品「グラバー」を、
晴れて5月、ゲームマーケット2018春にて発売する運びとなりました。

「東京ドイツゲーム賞とは?」等々、どの程度ご説明すべきかと言うこと自体、
初めて同コンテストを開催した2012年以来、なかなかの月日が経っていますから、難しいですね。
2018年現在、国内でのボードゲームの領域は、本当に広がったと感じるからです。
ボードゲームが拡散した(してしまった)、と言ってもいいでしょう。

一昔前、と言ってもほんの数年前までは、大抵のボードゲーム関連のニュースはネットと口コミの連絡網で隅々まで伝わっていたし、
それが伝わっている範囲こそが「自分達の(限られた)領域」だ、という共通意識があったように思います。
勿論実際に柵が立っていたわけでは無いんですが、今よりも「中」と「外」ははっきりしていたような記憶があります。
ちょっと大仰ですが、「自分はボードゲーマーだ」という意識を共有している当事者が占めている範囲が「中」でした。
今では、自分のことをボードゲーマーだと意識する必要も無く、手の届く場所に、ボードゲームを遊ぶ機会がありますからねえ。

それ自体は普及の一側面ですから悪いことでは無いですが、これは同時に「ボードゲーマー」ってこういう価値観の人間だよね、
という言外の「約束事」が、ボードゲームが遊ばれる現場で日に日に通用しなくなっていったということでもあります。
「一定以上の内容のボードゲームを遊ぶ上では実技試験と面接を受けて免許を取得する必要があります」とか無いですからね。

「このゲームを遊ぼうという人には、このゲームを『いかに楽しむか』ということへの理解と共感の裏打ちが求められる」…、
という「普通」が、昨今は、より一層通用しない。過去においては十分通用してたのかホントに、というのは勿論眉唾なんですが、
その過去と比べても一層そのコンセンサスが頼りなくなっている、ということです。
そうなると…、それに比較的頼らないで済む、「ローコストの労力でまずまず遊べる」みたいな商業ゲームが増えてくることになる。
ワーカープレイスメント大活躍というわけです。

面白いゲームを遊び続けたいなら。プレイヤー同士の(ゲームの結果の勝敗、強弱とはまた違う)「お主、できるな」という感覚。
ゲーム毎に異なる、「遊び方」「活かし方」を察知する感覚は、自分は今なお、何ら後退することなく必要なんだと思っています。
ボードゲームは、座ってて手番をやっておきさえすれば楽しくなることをお約束します、なんてものでは決してありません。
そんな、遊園地の人気アトラクションみたいなものではない。頭と心をフル活用せねばなりません。
プレイヤーに多くを求めずそこそこ遊ばす、みたいなゲームには傑作は無い。
頑張って作っても、「まあ、一応遊べるね…」「へえ、便利だね…」みたいなものです。

ボードゲームはプレイヤーの遊び心を活かすものであり、プレイヤーはデザイナーの願った遊びの実現を担うものです。
その呼応に立脚せずに、面白いボードゲームを実現させるのは不可能です。ボードゲームは人力だからです。
そしてプレイヤー同士もまた、競いながらも活かし合うものです。
ボードゲームには、緊張感のある課題があり、プレイヤー同士の対立があり、達成の喜びがあるものです。
勝つことは達成の一部に過ぎません。競争を通じて共に遊び、楽しみ、有意義な時間を共有するということこそが達成の根幹です。

日本国内でボードゲームを普及させたい、という動きの中で頻繁に言われてきた「ボードゲームは『簡単』で『面白い』」というアプローチ。
私は反対です。ボードゲームは「難しい」からです。ともすれば、作者に突き付けられ、プレイヤー同士が突き付けあう恐さがあるものです。
だからこそ、共に楽しめた時、嬉しいものです。作者の意図に応えられた時、それは誇らしいものです。
どんなにシンプルなものであっても、楽しく遊べたならそれはそのプレイヤーグループが成し遂げた偉業です。
難しいからこそ、その活動を通じて価値が生じるのです。

東京ドイツゲーム賞の方向性について語る時、「90年代ドイツの」「古き良き」と言う言葉で思わず説明してしまいがちなのですが、
自分は「90年代」にことさらこだわってはいません。
90年代に、自分達が大いに楽しみ敬意を抱いたいくつもの作品があったことは勿論そうですが、古いから尊重しているわけではない。
最近リリースされている「新しい」ということになっているボードゲームにつまらないものや大したことないもの、
そして隣近所のジャンルとの安易なブレンドが多いから、その「新しさ」を否定しているだけです。
手先では色々なことをやってはいるものの、結局は焼き直しだよ、それ…、というものは枚挙に暇がない。
新しさとは、プレイヤーの心に生じる新鮮な感動であるはずです。
そのレベルに達した「新たな遊び」が、そう頻繁に現在実現されているとは、到底思えません。
それ、本当にTCGより面白いか?本当にRPGより面白いか、ミニチュアゲームより面白いか?という疑問もしばしば感じます。
お茶濁すねえオイ、という海外メジャーパブリッシャーの商業出版、もう見飽きました。「へ~、そう」って印象をもたらすものが多すぎる。

最近出ているゲームだって、面白いものは面白いです。素晴らしいものは素晴らしい。
でも率で言うと少ない。仕方が無くはあるんです。面白いものを作るのは、本当に難しいから。
でもそんな中で、良いはずのものがどうしても目立たなくなってしまって、見過ごされていく。
出さなくても良い、遊ばなくても後悔はない、くらいのレベルのゲームが多すぎて、どうしても遊びたい、遊ぶ価値があるものを見つけるのがしんどすぎる。
長くボードゲームを遊んでいる人たちも、その状況に薄々気づいて悲しくなってるからこそ、
出てくる新作ゲームに対して擁護的になって、良かった探しみたいになってる気もします。

ニューゲームズオーダーは過去の名作を復刻して出してるわけですが…、まあ、過去の名作、ホント面白いわけです。出す度にため息が出ます。
「こんなに面白いゲームがこれだけもうあるのに、まだ新しいの作るの?出す意味があるもの、作れる?」いつも自問しています。


…と言った私の現在の心境を乗り越えて、今回グラバーの出版となります。随分ハードルを上げましたかね(笑)。
作者の赤瀬さんはこのゲームが評価されるのかご心配いただいている部分があるので、
こんな風にハードル上げないで、と思われるかもしれませんが(笑)。

ただ、グラバーが大賞を取った、最たる理由。それは、上に自分が書いたような、(とりわけ商業の領域での)
ボードゲーム出版の袋小路とは一線を画した、瑞々しいゲームが実現されていたからです。
爽やかな、ボードゲームの面白さに溢れている。
「ボードゲームって、最高に面白いよね!」という気持ちが満ちている。
遊んでくれる方々の楽しむ力に、無邪気と言って良い程に期待している。
審査員一同、その爽快さに、心洗われるような感動を覚えました。

「そうだよねえ!良いんだって、こういうゲームを出せばさあ!」

近年のボードゲームが「プレイヤーに求める出力の負担を軽減させる」方向に向かった理由。
そこには間違いなく、出版社サイドの「たくさんの部数を売りたい」という商業的事情があったと確信します。
規模拡大した後の商業の現場が、安定収入を当て込んでるからです、簡単に言うと。
90年代ドイツの、ボードゲーム専業で生計を立てる人が少なかった状態と、
現在の、多くの人がボードゲームで月給をもらっている状態の差。
より部数を売りたいから、今まではボードゲームを買ってもらうレンジに入っていなかった人まで顧客に含めたいから、
安易に薄めて出そうとする。譲っちゃいけないものまで、譲ろうとする。

ボードゲームが広まるのは、自分も嬉しいです。自分が本当に素晴らしい、面白いと感じたものが、
より多くの方々に楽しんでいただけるようになることは。
でも、面白さを薄めて割り引いて、ボードゲームの本来的に難しい心臓部を取っ払ってまで、広めますか?
それは最悪です。そんなんだったら、自分は広まらなくてもいいです。分かる人が、分かればいい。
分かってくれる人が増えたら嬉しいけど、まだ分かってない人に伝える努力を怠って、分かってるかのように扱ってお金を取るのは無いでしょう。
そんなことをしなければお給料をもらえない局面になったなら、私はこの仕事を続けることは選びません。
そんなやり方に自分の人生の時間を費やす価値は感じません。

自分達が人生の時間とお金を費やして生み出す価値があり、皆さんに人生の時間とお金を費やしていただき遊んでいただく価値があるゲーム。
それが今この「グラバー」だと考えていますので、…発売するわけでございます。

ということで、今まで以上に鬼気迫った前置きとなりましたが、グラバーの内容には全然行かないという(笑)。
近日中にルールのアップロードと、ゲームマーケット受け取りの予約受付(全額前払いをお願い予定)をご案内する予定です。
価格は4800円、今回の製造は1000部、予算はなかなか飛び出てる、ということで…、
是非「自分ボードゲーマーだけど」と言う方には、お試しいただきたいなと考えております。
ご興味ある皆様、是非!続報お待ちください。よろしくお願い致します。


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