2018/05/28 04:29 午前

グラバーの話、製品作りのこと。

  • 2018/04/20 06:53 午後
  • 投稿者:


[第二回東京ドイツゲーム賞二次審査でのニューゲームズオーダーの初回プレイの動画]
https://www.youtube.com/watch?v=Su9gko0a55U

[最終審査後の講評(音声のみ)]
https://www.youtube.com/watch?v=SEZLUqtjI3Y

[第二回東京ドイツゲーム賞の最終結果発表(の前段の最終協議)]
https://www.youtube.com/watch?v=510RkTvMEuE

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さて、グラバーの話の続きです。上のリンクは、第二回東京ドイツゲーム賞の二次審査以降のグラバー関連動画です。
ニューゲームズオーダーのウェブサイトに公開したルールPDFに加え、
「購入前に内容をより具体的に知りたい、ということであれば」ご覧いただくことも可能です。

このブログでは、ゲーム内容の具体的な所については…、これはパトロネージュについて書いた時もそうだったんですが、
そのものについて発売前にあまり具体的に自分から書くのは避けておこうかなと。
やはり完全にニューリリースとなる新作、オリジナルのゲームですので、「ネタバレ」感があるかと思うからです。
既に「グラバー買おうじゃない、遊んでみようじゃない」と決めている方からすればありがた迷惑になる場合もある。
「グラバーを買うかどうか」「遊ぶかどうか」は、基本的にはプレイヤーのお一人お一人が、自分で決めていただきたいです。
ですので、微妙に中核を避けながら、グラバーの制作周りの話を書いていきたいと思います。


●作者赤瀬よぐさんがアートワークも自らご担当されていること

二次審査(実プレイ審査)で送ってこられたサンプル版のグラバーを見て、自分は「これはズルいな」と思いました(笑)。
後にわかったことだったのですが、作者の赤瀬さんは漫画家・イラストレーターであられ、
応募してきたゲームのルールのみならず、イラストもご自分で描かれています。これは今回リリースする製品版でも同様です。
赤瀬さんの描かれるイラストに、私から依頼・お願いした事々の調整を加えていただき、
現在ご覧いただいているような「グラバー」先行版が生まれました。

自分がルールを書くゲームの絵を自分で書ける…、と言うデザイナーは、シャハトやメルクル等海外の作者でもいますが、やはり武器になります。
(半端な画力であれば、ともすれば自分の絵がゲームの天井を作ってしまうわけですが…)
自らが頭の中で動かしているゲームを、直接自分の手を通じて視覚化できるというのは、
自分は「ゲームデザイナーとしての実力」とカウントしていい部分であると考えます。
そして、パッケージ画像をご覧いただいた方には感じていただけたかと思いますが、
自分は赤瀬さんに描き上げていただいた原稿に、このゲームのさらなる「勝機」を感じました。


●オリジナルゲームの作り方、の作り方

ただ、今回のグラバー先行版制作にあたり、隠れた課題となったのは「赤瀬さんと私吉田の分業体制の構築」でした。
これがなかなか骨の折れる課題になるであろうことは、事前から十分理解していました…、し、想定していた程には実際苦労もありました。
制作を開始するにあたり、当然ながら赤瀬さんに「どういう手順で作業を進めていきますか?」という質問を受けました。
そのご質問は必ずあるだろうと思いました。それはおそらく「ニューゲームズオーダーさんでは通例どういう順序でゲームを制作していくんですか」
という意味でお聞きいただいたんだと思います。

申し訳ないなあ、と思いつつ、色々と話し合った後に一応「いったんパッケージから取り掛かりましょう」ということをお返事したんですが、
自分のその段階での本心は「実はどこからやったら良いかはわかりません」というものでした(笑)。
オリジナルゲームの制作にあたっては、実際は毎回そうなんですね。
作者の意図、アートワーク担当者の意図、製造サイドの意図。どこで攻め、どこで守るか。
いかにして箱に魅力を満たすのか。何かしらを当て込んで手順を決めはするんですが、実際どうなるかは取り掛かってみなければわかりません。
制作が現在進行形になって初めて、関係者が「このゲームをどうしたい」と思っているか、本音の所がわかってくるからです。
(逆に「そういうことはしたくない」みたいな話も非常に重要です)
そして自分としては、「ゲームの魅力を増す意図」については、可能であれば落とし込みたい。
ゲームデザイナーが一番で、編集者である自分が二番で…、というような、絶対的なランキングを関係者の中で作らないと言いましょうか。
もちろん暫定的な優先順位は置くんですが…、「有機的」というのかなあ。
(ジャンルも様々な)たくさんの要素がイメージの中で同居していて、これらの要素が調和を持って、
一つの良い方向に向かっていく、そんな想像をしています。
ゲームを良い物、面白い物にしようと参画する関係者各人が可能な限りやりたいようにやり、尊重し合いつつも遠慮はせず、
自分の意図について退くことがあるとすれば十分な納得を得た上で、できあがった時には全員が
「これは自分が一端を担ったゲームだ」と胸を張れるような…、そうしたやり方で作るのが秘訣だと思っています。
そしてその中で自分は、制作の一挙手一投足が導くことになるだろう未来を予測し、
それが(自分の想定するような)プレイヤーの皆さんにとって望ましい結果をもたらすのか、という判定基準を持ち込みます。
言わば「後にこのゲームを買って遊ぶプレイヤーの代理」をする。「風が吹いたら何屋が儲かるか予測する」係。
「これを1㎜動かしたら何が起こるか?」「ここをもう少しだけ改善する為にはどこを触ればいい?」
ずーっと、ずーーっとそんなことばっかり考えています。

外目から見ると、ニューゲームズオーダーでのゲーム作りは全くスマートには見えないはずです。
何回も変更があり、差し戻される。
いざとなれば、箱の大きさだって、販売価格だって、原価率だって発売日だって変えられてしまいますから。
いじれる要素を増やせるように、会社をやってきたわけです。いじれる要素が多すぎて統率するのは一層たいへんなんですが、
それが上手くできれば、より一層願ったりかなったりのものができる。そういう「ハードモード」が、自分達のゲーム作りのやり方です。

赤瀬さんに度々「これは私が決めた方が良いですか、それとも吉田さんが判断されるんですか」といった向きの質問を受けました。
その度、「どうするのが良いですかね」という話をしたと思います。メールでも、電話でも。
赤瀬さんにも粘り強くお付き合いいただいていく内、日を追って息が合ってきたように思いました。
形が見えてくるまでは、苦しい部分があるわけですが…、そこで頼りになったのはやはり、
赤瀬さんが応募してきたプロトタイプがしっかりしていたことと、制作の当初に描いていただいたパッケージのイラストでした。
パッケージのイラストは、ゲームを作る上でやはり「旗」になるので、大切なんです。

そして本日段階で、「どうも全ての内容物が無事出来上がりそうだ」という所まで差し掛かりました。
やっと(笑)。赤瀬さんにも今で完成状態をお見せ出来ていないのですが…、良いんじゃないかなと。
自分としては、良い所まで来れたのではないかなと、そう認識しています。


●1時間級の、楽しい、スリリングな、交渉ゲーム。

ルールPDFをご覧いただいた方はご把握かと思いますが、ルールブックが16ページ(最終ページが空なので正味15ページ)あります。
自分はルールブックは短ければ短い程優れていると考え、常々重く取っている部分なので悔しくもあったのですが…、
図や例が入っていない言葉足らず、魅力足らずなルールになってしまうことは、
ああいった形でこのグラバーを東京ドイツゲーム賞に応募されてきた赤瀬さんの意図を曲げることになるのではないか、
と考え、様々検討した後「16ページで行きましょう」と自ら決断しました。ホント悔しい(笑)。12ページにしたくはあった…。
ただまあ、これはグラバーが「ラー」「さまよえるオランダ人」「ババンク」とほぼ同サイズの箱を採用しているからで、
ルールブックの判型が例えば枯山水等より小さいためではあります。
このゲームのルールは、実際には非常に飲み込みやすく、加えて「プレイ中に間違えにくい」ゲームになっているのではないかと思います。
これは美点かなと。把握がしやすいうえ、いったん把握してしまえば、あまりルールを見返すこともなくなると思います。
多くのプレイヤーが、ゲームの攻防自体の難しさに注力できるゲームになっている。これは非凡です。
理想の高いゲームがしばしば「ぼくらプレイヤー全員の処理能力がもうちょっと高かったら、このゲームはきっと傑作なんだろうね…」
みたいな感想を抱かせるのと、対照的です。

商人としての役割を担うプレイヤーにとって魅力的な各種の施設タイル、展開を大きく変える「協力者カード」等、
「ある程度の時間遊ばせるボードゲームらしい」「期待に応えるような」華が添えられつつも、このゲームは決然とした「交渉」ゲームです。
ご存知の方は多いと思いますが、私は交渉ゲームが非常に好きですし、そういった駆け引きの遊びこそ、
何ら古びることの無い、ボードゲームのど真ん中だと信じています。
この中核に新たに組み込まれた「交渉カード」という要素。是非体験していただきたいです。
これから遊ぶ方々のことを思うと、ニンマリとしてしまいます。
交渉ゲームだからと、食わず嫌いはやめてほしい、本当に(笑)。


●先行版、4800円、1000部

価格を4800円としたのは…、当初は3800円すら狙っていましたが…、
パトロネージュや、それ以上に第一回大賞の枯山水を意識した上でのことです。
このゲームが、本腰のボードゲームを初めて遊ぶ方々にとっての、新たな突破口になってほしい。
そこで手が出る値段で1個、オリジナルゲームを出したいと、思っていました。グラバーは自分のそうした思いに、がっちりとはまりました。

ただ、これを先行版として、1000部とした理由。
一つには、時間のかかる海外製造を実行するスケジュールの余裕が無いという、弊社業務上の都合によりました。
西山の管轄する国内での製造ラインを用い、バランスを得た製品が完成しつつあります。
…厳密に言うとなかなか内容物は入っているものなので、1000部で4800円を十全に実現するには至らず、
予算としては弊社基準を飛び出ているのですが、それもまた「ゲームマーケットで1000部を販売する」という想定の上では何とかなっている。

1000部にした理由は…、やはりそれでも、「わからない」からです。このゲームが、2018年現在ボードゲームを愛好している皆様に、
そして今ボードゲームの魅力に気づき始めた皆様に、どのように受け止められるかは。
自分はめちゃくちゃ面白いと思っている。沢田も、そしてタナカマさんも口を揃えてそう言っていた。
でもその割には、今ボードゲームの主要パブリッシャーからは、こういうゲームはあまり出てきていない。
…古いんですか、こういうゲームは。

そんなことは無いよ。このゲームは、めちゃくちゃ新鮮だった。と僕らが言ってるんですけど、どうですか?
という、自分の声が届く周辺にいる、1000人ばかり、1000グループばかりの、ボードゲーマーの皆様への「投げかけ」です、今回のグラバー先行版は。

「他の人が遊んだ評判見てから買うかどうか決めます」という動き、あんまり好きじゃない。
それ、賢くない。楽しくない。自分がいの一番に買って、気の良い仲間と遊んでみりゃあ良い。
買ったゲームが面白かったら、自分の目利きを誇ればいい。
残念ながら詰まらなかったら、「チクショー!」と泣き笑いしながら、次のゲームを遊べばいい。

グラバーがあなたにとって面白いかどうか?本当は知りません(笑)。
ただ、あなたにとって面白いゲームであるように!と思って、一同頑張って作りました。
そのお代が4800円です。「何、オレの為に作ってくれたの?じゃあ良いよ、試しに遊んでみるわー」って人が、
1000人いたら良いなと思ってます(笑)。是非、グラバーは面白いのかどうか、確かめてくれたら嬉しいです。

ということで、グラバー、ゲームマーケットで発売します。
よろしくお願いいたします。

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