2018/11/14 09:07 午後

「もっとホイップを」日本語版を11月上旬に発売します。

  • 2018/10/26 09:01 午後
  • 投稿者:
 

先程ニューゲームズオーダーのTwitterアカウントでも発表させていただきました通り、ジェフリー・D・アラーズ作のゲーム「もっとホイップを」
(原題:Piece o' Cake)を日本語版として発売します。

※作者はアメリカ人のため、原題は"Piece o' Cake"となっています。
ドイツで出版された際の"...aber bitte mit Sahne"というタイトルに馴染みがある方もいらっしゃるかと思いますが、検討の上原題は英語表記としました。

本製品については、「ペンギンパーティ」「エスカレーション」同様、ゆかいなさかなさんのご協賛をいただいております。
こちらは海外工場より着荷次第、11月上旬より随時出荷を開始する予定です。価格は税込2000円となります。
アートワークは完全新規となっており、弊社製品を数多くお願いしているママダユースケさんにご担当いただきました。



箱サイズ及びタイルのサイズについて、上の写真をご覧ください。タイルの寸法についてはドイツ語版とほぼ同様ですが、タイルの厚みについては、
多角的に検討した結果ドイツ語版よりやや薄いものを採用させていただいています(弊社ハイソサエティのタイルと同水準の厚みです)。

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●日本語版出版の背景

さて…、この度のニューゲームズオーダーの新製品。
有名と言えば有名な、しかしながら知らない方も多いと言えば多いだろうこちらです。
私どもとしてはかねがねラインナップに加えたいと思っていたゲーム、それがこの「もっとホイップを」でした。

2008年にドイツのウィニング・ムーブズ社から出版され、大好評を博した本作は、当時からボードゲームを遊んでらっしゃる方からすると、
「ああ、ケーキのね!」で通るくらい、何かと出番の多いゲームだったかと思います。
ルールも簡単、30分以内で遊べる、ケーキが美味しそう…。
そして何より、シンプルなルールの中にも駆け引きの醍醐味・悩ましさがある。
と書くと「まさにニューゲームズオーダーが好きそうなやつ」って感じですが…まったくその通りです(笑)。
ただこのゲームに関しては、「自分達の好みにはまった」という以上に、
「こういうゲームが面白いってことなんだな」と自分達に再確認させてくれた、そんなレベルの傑作でした。

ということなんですが…、今回、自分達がこのゲームの日本語版出版を具体的に実行に移そう、と決意したのは、
このゲームのリメイク版となる「ニューヨーク・スライス」がアメリカで発売される件について聞き及んだからでした。

「あ、再版あるんだね!」とも思いましたが、「ケーキじゃなくなるのか…」と若干の懸念を感じたのが正直な所でした。
少なくとも日本に限って言うと、ケーキの切り分けというテーマが老若男女問わず幅広く遊んでいただく機会を創り出しているんではないか、
と評価していたためです。加えて、ニューヨーク・スライスについては「箱が大きくなっている」という点と
「ルールが様々加えられている」という点で、元版の方向性と異なるものとなっていた。

これは一面、もっとホイップが「装いも新たに再版された」と言える一方で、
他面「元のシンプルなゲームを遊ぶチャンスが遠のいてしまった」ということでもあるなと。


●出版の着手と経過

…と、そこまで考えが進んだ所で、「これは、日本語版としては元のケーキテーマとタイトルで出版することにしよう」と思いました。
日本語版はニューゲームズオーダーから別に出しましょうと。
善は急げということで、早速作者のジェフリーさんに出版打診のメールを送りました。

ボードゲームの作者さんは連絡がまめな人から気が向かない限り返信してくれない人まで本当に様々ですが、
ジェフリーさんは幸いなことに前者で、すぐに連絡が取れました。しかも嬉しいことにこちらからの提案に非常に乗り気でした。
しかしながら…、出版権の所在としては「ニューヨーク・スライスを出したベジェゲームズが包括的に持っている」とのことでした。
ちなみに「ベジェゲームズからの許諾が取れたら、ジェフリーさんとしてはうちが出版してOK?」との問いには
「そうだね、是非!」という返事がもらえました。

ということで、即日ベジェに連絡した所、こちらもすぐに返事が来たのですが、
「実はニューヨーク・スライスの日本語版の出版について他社と契約済みのため、お応えできません」という返答でした。

うーむ。


●契約の袋小路、と決めることも無い状況

…という所で普通は断念、というところだと思うんですが。
ここで諦めてしまうのはもったいないので、もう少し粘ってみようと思いました。
そこで、「ニューヨーク・スライスの日本語版を出す予定なのは、もしかしてアークライト社ですか?」という問い合わせをしました。
(ベジェゲームズの過去の日本語版出版物から判断して、可能性が一番高いのはアークライトさんかな、と思ったためです)
「もしそうなら、先方に『ニューヨーク・スライスとは別の役割を持つゲームとしてケーキ・バージョンを出したいと考えていますが、許可いただけませんでしょうか』という提案をしてみたいのですが」と。

先方は「確かにアークライト社なので、そちらで許可が得られるのであれば、こちらとしてはOKです」という返答をくれました。
重要な半歩前進。

ということでお礼もそこそこに今度はアークライト社に連絡を入れ、状況を詳細に説明しました。
…アークライトさんは今回の出版の意義に最大限のご理解をいただき、即日OKの返答を下さいました。
ということで…、状況一転、「もっとホイップを」の日本語版出版、可能となりました。
ジェフリーさんに日本語版打診してから二日間での状況打開。
今回の出版にご理解をいただいた関係各方面に、改めて御礼申し上げたいと思います。


●本製品の仕様、ルールの(小さな)変更点について

既にニューヨーク・スライスが(日本語版を含め)存在する状況でケーキバージョンを出すということで、
本製品出版にあたっては「差別化」を一層重視することを心がけました。
ポイントは「大きさ」「価格」「シンプルさを軸としてのルール整理」という三点です。

・大きさ
自分がこのゲームの日本語版出版を考えた時、即座に「箱を小さくした方が良いだろうな」と思いました。
このゲームの長所は何といっても「コストパフォーマンスの良さ」。
コストと言っても単純に販売価格のことだけではなく、しばしばそれ以上に重要となる、
「遊ぶ準備」「遊ぶ人を揃える」といった労力の側面、それに比したプレイ後の満足感、
そのバランスが抜群に優れている、というのが、「もっとホイップを」に自分が持っている印象です。
「これだけのことでこんなに楽しめるのか~」と感心する。

ただ元のドイツ語版を考えた時、そのコスパに若干ながらもブレーキをかけていたのが「やや大きな箱」だったかなと。
考えてみれば、そこそこのサイズのタイルが57枚も入っているゲームなので、どうしたってカードゲームサイズにはなりようがない。
それは当然なんですが、ゲーム内容を考えると、も~ちょっとだけ小さかったら嬉しいんだけどなあ!と感じるのも事実でした。

そこで今回、ややタイルを薄くさせていただく選択をし、箱サイズを限界まで縮小する決断に至りました。
一方タイルの面積については変更していません。
「箱を小さくするために、タイルを薄くするのはどうなんだろう…」というのは最後まで迷う部分ではありましたが、
今回の「もっとホイップを」に託したい卓上ゲームの新たな広がりへの可能性を考えた時、踏み切った方が良いだろうと考えました。
「いや、絶対分厚い方が良いぞタイルは!」という方もいらっしゃるかとは思いますが、そういった方にはニューヨーク・スライスの選択肢もある。
極論すれば元のドイツ語版を中古で買い求めることもできるでしょうから。

・価格
価格は今回、税込2000円となっております(消費税が来年上がるようなのでその際は再度考えます)。
こちらの価格については既に「おお、結構安いね」という反応をいただいています。
恐縮ながらその反応は想定しておりましたので、たいへん嬉しいです。
今まで以上に幅広い方に、多くの場面で遊んでいただける可能性をこのゲームに持たせたいと考えた上での設定です。
なお、この価格を実現する為にタイルを薄くしたわけではない、ということは念のため申し上げておきます。
「こんな価格でできるの?」ということに対する答えは、純粋に「生産数」(つまり目標としている販売規模)です。
これには販売に常々ご協力いただいているゆかいなさかなさんのお力も大きいですし、
今回についてはアークライトの物流部さんでもお取り扱いをいただく約束をしています。
ニューゲームズオーダーが届かない範囲の販売店舗(TCGショップなどにも新たな売り場は増えていると思います)にも、
合間にやる気軽な、でもちょっと趣の違うゲームとして、お広めいただけるのではないかと期待申し上げています。

・シンプルさを軸としてのルール整理(以下このゲームのルールを既にご存知の方向けのお話です)
今回の日本語版を出すにあたり、作者のジェフリーさんと協議の上、ドイツ語版と若干の変更をしています。
「『後から食べる』選択肢の撤廃」「スタートプレイヤーを2回務めるプレイヤーへの平等確保のためのオプションルール追加」
「『5』と『9』のホイップの個数『変更』」の3点です。

まず、ドイツ語版のルールには「手元にとってあるケーキを後から食べることにする(代わりにそのラウンドケーキの分け前をもらわない)」
というアクションの選択肢があったのですが…、これは戦略的な意味合いがやや薄く、無くても良いのではないか…という、
このゲームのルールにとっては「玉に傷」という印象があるものと考えていました。ジェフリーさんにこの点、単刀直入に確認した所、
「実はそれはウィニング・ムーブズが無断で付け加えたルールで、自分は出版されるまでその変更を知らなかった」
というかなり衝撃の回答があったため、同意の元撤廃することになりました。

次に、このゲームは5ラウンド行われるゲームで、スタートプレイヤーが原則不利なゲーム、ということで、
プレイ人数が少なかった時の2回スタートプレイヤーを務めるプレイヤーが生じる不平等について、言われることがありました。
これについては過去に作者本人からオプションルールによる是正の提案がなされていた為、こちらはルール末尾に加えています。

最後に「5」と「9」のホイップ数について…、「5」のタイルのホイップ数を1個から2個に、
そして「9」のタイルのホイップ数を2個から1個に変更しました。この点だけは…、私の個人的な思いとも言えるルール変更です。
しかしながら当時をご記憶の皆さんからすると、「ああ、あの件か…」と思い出されるかもしれません。
各タイルに記されているホイップクリームの数が、そのタイルを獲得して食べた場合の点数になるわけですが、
2008年当時、メビウスゲームズさんが輸入され、最初に流通したこのゲームのタイルが、今回採用したのと同じ構成をしていました。
「このゲームは面白いぞ!」と噂があっと言う間に響き渡り、当時としては本当に多くのボードゲーマーが遊んだ後で、
「どうも『5』と『9』のホイップの数が逆、タイルのエラーらしい」と言う話があり、後日メーカーから修正タイルが配布されました。

自分達としては「『5』のホイップが2個、『9』のホイップが1個で全然問題無かったけど…」
と感じましたが、とは言えエラーということなので、修正タイルをいただき、自分達も改めて遊ぶことにしました。

この後のことは、意見が分かれる所でもあると思うんですが、
「元のタイル構成の方が、ちょっとしたアクセントになっていて面白かったような…」というのが私達の感想でした。
これは自分達だけではなく、その頃のボードゲーマーの中で度々話題に上がったことだったと、記憶しています。

この話をジェフリーさんにした所、「その話も理解できるから、ホイップの数については一任するよ」
というお話をいただいたため、今回、前述の通り(つまり「間違い」と言われた当初の状態のホイップ数)に変更しました。
決してゲーム内容を過度に複雑にする変更では無く、本作の面白みを際立たせる向きの変更と考えているため、
元版(の修正後のもの)で遊んでいた皆様にも是非お試しいただければと考えています。


●「もっとホイップを」リリースにあたっての思い

さて。「もっとホイップを」日本語版を今回、自分の考える形で出させていただくのですが。
2018年も終わりに近づいている今、ボードゲームを取り巻く現状に対して、
自分ができる一番効果的な…のではないかと考えたのが、この取り組みでした。

「え?NGOのいつもの、ちょっと気が利いてはいるけど地味な再版じゃん」と思われる方も、いるんじゃないかと思います。
ただ、自分としては、このゲームはなかなかに得難いボードゲームの「切り札」だと考えています。
ボードゲームを遊んだことある、買ったことある、という人は、この10年、国内で激増した。間違いないと思います。
しかしながら、「買う人増えて欲しい」という商業的な要請にとらわれ過ぎ、
プレイヤーに「求める」のを怠り過ぎているのではないかと、思うことがあります。
「買ってくれさえすればいい」という風潮、ありませんかと。

このゲームは名作という評価は確立してますが、「でもあのゲーム、結構悩ましいよね」という評価もある。
ボードゲームとしての醍醐味としての、難しさがあります。
誰でもできるよ、って言えるか?と言われたら、「自分にはちょっとしんどかった」と感じた人も、いると思います。
「みんなは面白いって言ってたけど、自分はケーキの切り分け方、勘所が良くわからなくて、参ったんですよね…」という感想を受けもする。

自分がこのゲームを切り札だと思うのは、自分達の思うボードゲームの面白さの根幹である所の「駆け引き」が不可欠のゲームだからです。
他の人、参加者全員の思惑、事情を考えないそしてともすればしゃべらないと、心底は楽しめないゲームだからです。
他の人の狙いを見通せて楽しい、見通しきれなくて楽しい。

「他の人が考えてることとか、全っ然わからないんだよな…無理…」という苦手意識を持ってる方にこそ、
もう一度、できたら!このゲームを挑戦してみていただきたく、思っております。
幸いにしてこのゲームは、長大なルールや盤上にひしめく多すぎる物品にまぎれることのない、シンプルでピュアな駆け引きのゲームです。
「あっ、そういうことだったのか」という気付きのチャンスが、一番多いゲームでもある。
その気付き、もちろん簡単ではないんですが…。

ボードゲームを新しくするのは最早デザイナーの役割ではないのではないか、と考えるようになって久しいです。
ボードゲームが新しくなるのは、プレイヤーが新しいことをできるようになり、新しいことを求めた時ではないかと。
「もっとホイップを」をがたくさん遊ばれて、「駆け引きってのは、難しいけど面白いもんだね」という心持ちの方が今よりずっと増えたら。
その時改めて、ドイツボードゲームのデザイナーのターンが来るのではないかなと。
ボードゲーマーとして頭と心と口を動かしている、というにはまだ満たない方々に巧妙に、
そして過度に寄り添って利益に変えられる技量を競うのは、ゲームデザイナーにすべき要請の全部では到底無い。
「もっとホイップを」から、もう一度始めませんか。というのが、自分の今の願い、心境です。

…な~んて小難しい話を読まなくても(笑)、「もっとホイップを」面白いゲームですので。
2000円の小箱ですし、一つ買って、色んな方と遊んでみていただければ幸いです。
以上!勝負じゃ!

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