2018/04/22 03:58 午後

「シド・サクソンのゲーム大全」Amazon未入荷の件についてご説明

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  • 2017/12/21 06:49 午後
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本日は、12月16日に一般販売を開始しました書籍「シド・サクソンのゲーム大全」につきまして、
Amazonに入荷されていない状態が続いている件をご説明したいと思います。

私共としてはなお1000部以上の在庫を持っており、Amazon(e託サービス)からの注文を待っている状態が続いているのですが、
12/21時点でなお注文が来ていないため、納品が行えない状況です。

何故注文がなされないのかについては出荷開始直後にAmazonに問い合わせ済みです。
返答は「日販からの入荷を予定しているため」ということでした。
しかし、弊社から日販さんには書籍を出荷しておりません。
これは弊社が(私共の書籍がホビー商材の性格が強いことから)書店流通としては一般的な委託・返本の取り扱いに対処できない為です。
(Amazonのe託からは実質返本が無い為、例外的に委託取り扱いを行っています)

弊社が唯一取引している書店取次「地方・小出版流通センター」さんはほぼ買い切り条件での書籍注文を行ってくれるため、
大型書店等への納品については一括してお願いしております。本件について今回先方に問い合わせたところ
「確かに日販さんからAmazon向け名目で当該書籍を融通するよう連絡があったが、NGOさんの書籍はAmazon向けには出さない約束なのでお断りした」
という回答を得ています。
(流通に際してAmazonへの出荷が混線しないよう取り決めており、これをしっかりと守っていただいていたわけです)

…と、ここまでの経緯もAmazonサイドには説明済みで、ここ数日注文を待っているのですが、残念ながら注文は来ておりません。
多数のお客様がAmazonでのご注文をご希望であり、私共は即日Amazonに出荷可能な形で在庫を持っているので心苦しい状況ですが、
当書籍については早々の品切れ等が起きているような状況ではございませんので、その点はご安心いただければ幸いです。

ボードゲーム専門店各店やイエローサブマリンさん等を中心に平常にお取り扱いいただいておりますので、
ご興味おありの方はお手数ですがAmazon以外の売り場にお問合せをいただければ幸いです。
Amazonでも購入可能になりましたら弊社Twitterにてお知らせいたします。


パトロネージュのお話、その4(最終回)。

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  • 2017/12/16 09:45 午後
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http://www.newgamesorder.jp/games/patronage

さて、前回は「金貨と木皿」の採用についてのお話をしました。
各方面にとって価値あるものとして打ち出すべく、自分が構想した唯一「行ける」と思ったパトロネージュがこれだったわけです。
自分はこの構想…というより壮大な皮算用をひねり出すのが最大の役割なのですが、
この私の皮算用の領域に大きな幅を与えてくれるのが、実際に製造を取り仕切る西山を始めとしたニューゲームズオーダーの各人の働きと、
安易な方法に頼ることなくここまで引き上げてきた会社の規模、構築してきた販路ということです。

唐突に背中に翼を生やして飛ぶことはできません。人ですから地道に歩いて、ということになります。
2010年に行った「ぼくらの火星」の制作を通して生じた、「ゲームの制作、製造、流通の、質と量両面での向上」というテーマがありました。
3歩進んで2歩下がる、ともすれば3歩下がってしまう日々でしたが、7年で一定の成果を見たことで、
ゲーム作りと販売に際して取れる選択肢の幅がいくらか広がっており、私が今回構想したパトロネージュは、
「自分達の力量をフル活用すればぎりぎり実現できる」と見極めたところにありました。
逆に言うと、製造の選択肢も、予算規模も、ぎりぎりまで使うからこそ相応の力を得るということでもあります。

とりわけ金貨は、自らの手で造形も行う西山の領域です。
自分が金貨と言い出した時点ではその想像は曖昧なものに過ぎなかった為、まず拠り所を作ろう、ということで、
ふたつの方向からの検討を始めました。

ひとつはババンクでも行った、3Dプリンタを用いた形状の検討でした。
直径や厚みはどういったものが使い易いのか。そして「感じが出る」のか。
金属製コインは「重量=コスト」といって差し支えないので、野放図に大きくはできませんが、
金属製にする甲斐の無いものでは駄目ですから、実用性と、満足感と、製造費用のバランスが大切。
加えて「碁石型」も検討対象に入れました。類似している物を考えた時、碁石というのは平面から持ち上げやすく、機能的であるからです。

もうひとつは、「ルネサンス期イタリアで使用されていた実物の参照」でした。
調べてみたところ歴史上のコインのレプリカを販売している海外のショップは散見されたので、
ルネサンス期のフィレンツェの金貨「フィオリーノ金貨」のレプリカを取り寄せて、デザインを検討することにしました。

サイズ検討については20mmと25㎜を作って各種比べたものの、「20㎜は少々小さく、25㎜あれば満足なサイズ」という結論になりました。
厚みについては「4㎜あると持ち上げ易くコインらしい」「碁石型はやはり使いやすいが製造の安定に際しリスクが高まりそう」。
直径25㎜、4㎜厚、というのが一つの答えだったわけですが、これを40枚入れる…と言う話は、計算するまでもなく西山が言いました。
「コスト爆発だわそれ」…そんな気はしていた(笑)。
ちなみに2000セットですから、予定しているコインの製造枚数は8万枚(+不良品対応分)です。

次はこれを、満足感が保たれる範囲で削るフェイズに入りました。
まず直径を1㎜ずつ削った3Dサンプルを作り、「22㎜までは削ろう」という結論を出しました。
加えて…「縁を高めにして、中央部を窪ませることで金属の使用量を減らそうか」ということに。贋金づくりみたいですが(笑)。

ここまで進んだあたりで、海外に注文していたフィオリーノ金貨が到着し、確認した所、西山と、
「うーんそうか」「まあそうだよね」と唸ることになりました。

フィオリーノ金貨…実物は(いやレプリカですが)凄く薄いのです。多分1円玉よりも薄い。
「これを忠実に再現したら…使い難いだろうねえ」「あとあんまり夢無いよねこれ…」
実物(のレプリカ)のフィオリーノ金貨と、22㎜x4㎜厚のサンプルを見比べて、しばらく思案することになりました。

自分が出した結論は「表裏の意匠はフィオリーノ金貨を踏襲」「サイズは22mmx4㎜厚で」ということでした。
それにあたり、これは言わば「マンガ肉」だ、という説明を西山にしました。
リアルなフィオリーノ金貨そのものを再現して入れた、と主張して、使い難かったり、期待通りのイメージをもたらさないゲームを作るより、
それなりの脚色があっても、楽しいゲームということを優先する場面だと考えたのです。
そういう判断を下していいのではないかな、と思えるほどには、自分達はこの金貨のことをずっと考えていました。

サイズが決まり、西山がパテを使った造形に入りました。この作業中、西山が始終「何なんだよ、この裏のトボケ顔のおっさんは!」
とレプリカコインを眺めつつため息をつき、それでも造形を再現すべく粘り強く手を進めていました。
後で調べたところ、これは「聖ヨハネ」だそうで(笑)、多少私共の信仰心もこのコインには宿ったかなと思いました。

作った原型を元にシリコン型を作り、低融点のメタルを鍋で煮て流し込んで…、という、
西山恒例のメタルフィギュアの製造工程に入った後、程なく最初の金属サンプルが出来上がりました。
(こう書いてしまうと2行なのですが、ゲームマーケットでのタチキタプリントの外注仕事が多数あり、西山の度々の泊まり込み作業の結果です)

「おお、素晴らしい!」と自分は称賛したのですが、想定していたアカシアの木皿にその数枚を投げ込んでみた時、
思わず「神よ!」と叫びたい気持ちになりました。その後しばらく、西山の苦心の作を、繰り返し木皿に投げ込んでいました。

音が重い…。

表裏とも素晴らしいレベルで意匠が再現され、直径厚みも注文通り、持ち上げやすく、持った時の重みにも満足感がありました。
ただ、自分が想定していた「ちゃりん」という音が鳴らない。何度放り込んでも、「ごとっ」という音がしていました。

ゲームマーケットの日程も刻一刻と近づいてきていましたから、非常に気は重かったのですが…、西山に、そのことを伝えました。
「あと0.5㎜、薄くしてほしいんだよね…」と。西山は「まじかああああああ」とは言いましたが、すぐに修正にとりかかりました。
ホント頭が下がる思いでしたが、これを直すのが西山の仕事であり、これを直す必要があると伝えるのが私の仕事だということです。

数日後、西山が作り直した3.5㎜厚のコインは…、(理論的な確信があったわけではない0.5㎜減の判断にも関わらず)
「ちゃりん」という音を立てました。…嬉しかったですねえ。

しかしこれは勿論、地獄の一丁目に過ぎないわけです。西山に「ぶっちゃけた話、国内で製造すると1枚いくらかかると思う?」
と聞くと、「40円じゃないかな頑張って」。40円×8万枚は?
「…まずいですなあ」計算して、自分は答えました。「コインだけで、売価5000円の計算だ」

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ここから、海外製造についての調査が始まりまして…、色々すっとばしますが…、あのようなコインが40枚、収まることとなりました。
税抜7500円、税込8100円という価格設定は…、初版枯山水と同じですが、これもまた「何とかここに抑え込んだ」という感想があります。
原価ベースで数百円余分にかかればあっという間に売価が上がりますから、途中では「売価1万円越え」を覚悟しなければならないのかな…、
と考えた瞬間もありますし、「金貨と木皿をプレミアム版専用、もしくは別商品にする」という可能性について考慮もしました。

しかし、何とか当初の構想通り、全てのパトロネージュに「金貨と木皿」を付けたかった。
金貨のことばかり言ってますが、アカシア製のこの木皿も、風合いですとか曲面の具合といった点、また「金貨と共に立てる音」と言った点で、
割り引けるものではありませんでした。

加えて、ゲームマーケットで先行販売分をご購入の方にはお気づきの方もいらっしゃるかと思いますが、中敷きのこともあります。
内容物として金属コインを入れることに決めた時、「箱の中で金貨が飛び散って、カードを痛めたりしたらまずいよね」
という議題は、すぐに生じました。ケイラスの限定版で、金貨が中敷きをぶち破ってるのを発見ししょんぼりした方も、いらっしゃるでしょう。
また、採用した木皿は手工業で作られている製品で大きさにばらつきがあったので、それを吸収できる構造が必要でした。
加えて、このゲームは大量のカードが入っているため、「スリーブを付けたら入るのか」という問題。
中敷きを変形できる機構にして、スリーブを入れた後でも一応収まるように…してみています。
あとカードが入るスペースの上にゲームボードをはめると蓋のようになります。

入れられるかぎりぎりだったため内容物には書いていませんが、山中さんの手による「パトロネージュ講座」は、
親しみやすくルネサンス芸術の知識を与えてくれ、素晴らしいものになっているのではないかと思います。
このゲームに採用されている芸術作品が現在どの美術館に所蔵されている、というような一覧を含め、
枯山水に続き、自分たちなりには「テーマを適当に取り扱わないように…」という形にさせていただきました。

カードの印刷については、日頃より弊社ゲームの国内製造でお世話になっている印刷会社「株式会社SYS」さんにお願いしています。
このゲームの試みにご賛同をいただき、名作カードの金箔加工を含め、予算や納期や、様々な無理を聞いていただきました。

山田さんと、私たちニューゲームズオーダーと、ゲーム作りの考え方について、相違点は少なくはありませんでした。
そのために難しいことはたくさんありました。しかし、共通している大きな一点が、揺ぎ無くあったからこそ、
パトロネージュを出版することができたと思います。

面白いゲームとは、皆さんに楽しんでいただきたいゲームとは、どういうものか?

その一点は、制作に際して一度も揺らぐことなく、共有していたと思います。
そのゲームは、どうすることによって本当に、本当に実現できるのか?プレイヤーの皆様のお力を、喚起できるのか?
その点に関しては、山田さんに譲っていただき、私の考えを通させていただいたことは少なくありません。

「このゲームは本当は面白いんだ」と言いたくはありません。私がそう遠吠えをすることなく、皆さんに面白さをお届けすることができるかどうか?
関係各方面の皆様のご助力をいただき、2017年の我々ニューゲームズオーダーの、全力を投じました。

本場ドイツで認められるかどうかとか、私としてはあまり興味がありません。
テーブルを囲んだ3~4人の皆さんが「俺のボッティチェリ仕事しねええええええええええ!」とか、
「うわああああサンピエトロ流れたああああ」とか、「俺の工房の名も無き画家たちがモナ・リザを描いた…」とか、
「奮起来い!奮起!」とか言いながら、金貨をちゃりんちゃりんと木皿に投げ込んで、ひと時楽しんでいただけるかどうか。
そこにしか興味がありません。その数人にしか、興味が無い。
その数人が最高に楽しんだら、それは最高のボードゲームってことでも良いかなと。

僕らの考える面白いボードゲームというのは、例えばこういうものです。
ということで、明日中にも、弊社サイトでの通信販売を開始予定です。
よろしければパトロネージュ、遊んでみていただければ幸いです。正直…お勧めです!

パトロネージュのお話、その3。

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  • 2017/12/15 09:17 午後
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さて少々日が空きましたが、パトロネージュのお話の続きです。

パトロネージュの大きな部分を占める150枚超のカードについて、山田さんから提出されていたサンプルを元に、
ママダさんと山中さんと、カードのデザインを始めました。このゲームに登場する芸術作品には
「建築」「彫刻」「絵画」の3種があり…、それぞれ「資料を用いるのか(用いれるのか)」、「ママダさんが描くのか」という問題がありました。
また芸術家についても、しっかりとした肖像画が残っているものから素描のみのもの、彫刻だけが現存するもの…等々、様々でした。
サンプルでは全般的に写真画像が貼られていましたが、これをそのまま製品にすることは難しい為、
山中さんを中心にバランスを模索することとなりました。結果としては絵画については元画像、
建築・彫刻については現存するものの写真を元にママダさんが調整・彩色、芸術家については現存資料を参考にママダさんが執筆、となりました。
一方もう一つの重要事項となる箱絵については、様々検討の結果「時祷書」「写本」の形式を踏襲することにしました。
これは私の「ゲーム内容を表す光景を、美術的観点とバランスを取りながら表紙に収めていただきたい」という要請に応じていただいたものです。
…と、制作を終えた所で書くのは簡単ですが、ママダさんを中心に、相当なお骨折りをいただいた作業でした。
山田さんともゲーム上の機能性との両立について密にお話合いさせていただきました。

ニューゲームズオーダーでのゲーム作りでは、これは私自身の元々の性分も大きな動機となっているのですが、構成する各要素について、
硬軟取り合わせて多くの意味を同時に入れ込みます。その優先順位や精度へのシリアスさ…といったことについては言ってしまえば
「最後は感覚」ということになるのですが、ともあれ「あちらを立ててこちらも立てる」といった信条で、倒れても倒れても立て直し立て直して、
最終的には「方々立ってる!凄い!」という状態を獲得することを狙って、作業を進めていきます。
「めっちゃ都合のいい状態」への執着と根気が不可欠な仕事になります。

ただそんな私共でも、今回ほど多くの要素を同時に、両立を目指して束ね合わせ、製品に入れ込んだことは、今までありません。
「このゲームをこういう物にしたい」と真剣に考える、確かな能力を持った主体が多ければ多い程、
それはゲームが持つ魅力が増す可能性となりますが、当然ながら、その個々のこだわりの協調を取るのは飛躍的に難しくなります。
ただこのゲームは「素晴らしいけれども商業と適合させることが難しい」作品でしたので、リスクを取ってでも、
大きな力を引き込む必要がありました。「何でこんな無茶するの…」と傍からは見えるのかもしれないのですが、
後に引けないくらい張り込んでおいて「大当たりが残っていないとわかっているくじを引く」というのは、誰の為にもならないと考えたのです。


上記のような制作の方針が最も顕在化しているのが、既にご存知の方も多いと思いますが「金属製コイン」と「木皿」でした。
今日はそのお話をしたいと思います。

山田さんと製品仕様について初めてお話した際は、「ママダさんと山中さんをアートワークに起用する」ことのご了解をいただくことが
第一議題だったわけですが、実際はそれ以上の課題がカードに並ぶもう一つの中核的内容物である「予算を表すマーカーと受け皿」の取り扱いでした。

自分の中では「大量のカードのイラストと印刷で相当のコストがかかる」ことはこの時点での前提となっていましたので、
このゲームの製品としての価格、コストのバランス取りの為、自分の中で定まった方法として、山田さんに尋ねました。
「受け皿は無しにして、『紙製チップの表裏で未使用、使用済みを表示する』といった方法の採用についてはどのような感想を抱かれますか」と。

山田さんのお答えは、ある程度は予想していたものの、その予想以上にはっきりとした「それは止めていただきたい」というお答えでした。
東京ドイツゲーム賞に提出されていたサンプルでは、市販のマーカーにマドレーヌのカップ、といった簡易なものが入っており、
勿論遊べるものではありましたが、そこにどういった意図が置かれているか、というのが強く伝わってくるものでは無い状況でした。
そこで、私がその理由を尋ねますと、その答えは「このゲームの着想に関わるものだから」ということでした。

TCGにおける(マジック・ザ・ギャザリングでいう所の)「タップ」「アンタップ」という手続き、表示方法については、
テーブルゲームに日常的に親しんでいる方ならばご存知のことも多いことと思います。
縦置きにしたカードの効果を「起動」する際に「タップし」(90度回転させて横向きにし)、使用したことを示す。
多くのTCGでは、自分の手番が回ってきた際にこれらを全て「アンタップし」(横向きになっていたものを縦向きに戻し)、
再び全てのカードが未使用の状態となったことを示します。

この手順についての改善を考え、その一つの答えがこの「マーカーと受け皿」です、というのが、山田さんのご説明でした。

TCGではゲームが展開するにつれ場にあるカードが増える傾向にあるため、自分の手番開始時に「アンタップ」を行う際、
それなりの数のカードを全て「縦向きにする」手数、手間が生じる。ここに分け入りたい。
ラウンド自分がコストを費やした時、「容器にマーカーを投入する」。そして次のラウンドの開始時に全員が「容器をひっくり返す」。

「1回の動作で『アンタップ』を完了できるようにしたいんです」

というのが、山田さんのデザインの意図でした。
このゲームはカードに関わる手続きから出来上がっていったゲームでは無く、この「マーカーと受け皿」にこそ、発想の出発点があると。

…なるほど、と自分は考えこみました。
まずこのアイデアの方向性について自分がどう感じたかと言うと、それは素直な「共感」です。それは確かに良いこと、という。
それはこの「マーカーと受け皿」がもたらす「改良」が、地味ながら確かなものだったからです。
この世界に「手番の度にアンタップをたくさんすること」を楽しみとしているプレイヤーがほとんどいないだろうことは想像に難くないですから、
この改良が、(実現さえされれば)確実なメリットをもたらすことは明らかでした。

ゲームの内容や、アートワークや、その他様々な部分については、それはプレイヤー皆様個々のお好みがあります。
一方でこれは物理的な「改良」で、遊ぶ人ほぼ全員にメリットをもたらし得る。
こういったこと一つ一つの積み上げは、ゲームの楽しみに確かな力を与えていきます。
(先のババンクでの「1㎜1金」も、これと同様の考え方です)
このゲームのリズミカルなテンポと、この「マーカーと受け皿」は確かなリンクを持っていると言えました。
ルールの量、ゲームの各場面で提示される選択肢の広がり、そして手続きと用具の調和の度合い、といったことは、
ゲームのリズムに影響を及ぼし、そのゲームを名作にも駄作にもしますから、…やはり、この方のデザインには確かなものがある、
という認識を、このお話を通じてさらに強いものにしました。

しかし、費用対効果という角度から見ると、「マーカーと受け皿」を製品に入れ込むのは、率直に言って難題でした。
これを及第点というレベルまでコストを切り詰めて、と考えると、紙製、もしくは木製の円形マーカーと、
紙製の容器(できるだけ小さくできれば平面。ちりとりのような形や組み立て型)となります。
「未使用」と「使用済み」の領域分けができ、容器を持ち上げてのワンアクションでリセットが出来れば、一応その機能は満たされることになります。
しかしこれは、どう考えても「喜ばれ難い」。そしてその割に「それなりのコストはかかる」。そして「事務的すぎる」。

「コストを削ってリーズナブルに出版し、より多くの人にゲームの魅力を伝えることを目指す」という方向性も、
「夢のあるアイテム、そしてそれに伴うゲーム体験を現出させて、遊んだ人たちにとっての唯一無二の宝物にする」という方向性も、
どちらも良いのです。ただしそれが「十全に実現されるのであれば」です。
ゲーム毎に、その二つの方向性の間で、良い所にバランスを取るのが大切だと、いつも考えています。
真剣に考えるべきなのは、「それでは、このゲームはどこに位置付けるのが良いのか」「それ以上に、どこならば位置付けられるのか」。
創意工夫を凝らしてゲームを作る人が居て、貴重な時間やお金を費やしてゲームを遊ぶ人たちがいる。
そして勿論、その橋渡しを継続することを生業とする私たち自身も。
「作って良かった」「買って、遊んで良かった」「売って良かった」その全ての「良かった」を、どのように実現するかと考えますと、
どんなゲームも、選べる幅は決して広くはありません。
というより、実現可能な細い道を見いだすことだけでも難しく、加えてその道はなかなかに険しいのです。

作者である山田さんの思いをお受けして、「マーカーと受け皿」が不可欠であることは、理解し、また共感しました。
同時に、「そこにさらなる力を引き込まない限りは、勝負できる製品としては、このゲームは実像を結ばない」という確信が、すぐに生じました。

「マーカーを受け皿に入れる」のは、このゲームにとって「お金の支払い」を意味している。
そのお金は、パトロンであるメディチ家が、工房の責任者である自分(プレイヤー)にくだされたもので、
支払う先の最もたる所は、歴史に名を連ねる天才的な芸術家たちとなります。この獲得合戦が、このゲームの一つのハイライトです。

話し合いの中で「実現可能な形」を模索するうち、…自分の中に「金貨と木皿」のビジョンが生じました。
同時に…「ミケランジェロ君、我が工房に来てくれ!」と言うフレーズと、きらきらとした金貨が木皿の中で立てる金属音を想像しました。

このゲームに参加する全員に、まずこの金貨7枚と木皿が配られる。「パトロネージュ」を受けるわけです。
自分がゲーム中に取る一挙手一投足にこの金貨の支払いが伴うことで、その貴重な予算を切り盛りしているということを常に意識してもらいたい。
算数的な確率計算に邁進するばかりでなく、この金貨と木皿から、この作品が描き出す世界に思いを馳せていただき、
ゲームの両輪としたらどうかと考えたのです。
もちろん、他のプレイヤーの手元にある予算の使用状況を一目で把握できる、視認性の良い用具、という用途も、これは同時に兼ねています。

この金貨がアピールする魅力がゲームへの求心力を増し、それがこのゲームの面白さの真価に触れることに、繋がってくれたらと。

ゲームを作る度に、肝に銘じています。
私たちは美しいルールと、そこから生まれるゲームを愛していますが、遊んでいただくほとんどの人にとって、ルールは最後の2%。
その2%に触れていただくため、気付いていただく時間の猶予を作り出すために、98%の力を蓄えなければいけないと。

自分の心中には、「パトロネージュが遊ばれている風景」がありありと想像されました。プレイヤーの皆さんの手元には、金貨と木皿がありました。

この金貨と木皿が備わっているパトロネージュと、備わっていないパトロネージュと、それはどちらがより良いものだろうか?
このゲームを手にする皆さんは、自分の財布の中の二千円余りを、この金貨と木皿の為に、奪ってくれるなと言うだろうか?
それとも、このゲームにより理想に近い姿形を与えてくれるなら、二千円を惜しむことは無いと言うだろうか?

ここは自分の想像でしか無いわけですが。これだけ多くのボードゲームが溢れている中で、
皆さんが本当に欲しいのは「未だ得ていないゲーム」「未だ得ていない楽しみ」だろうと、私は思うのです。
自分の仕事はそのお気持ちにお応えすることだと思って、ゲームを作りたいので…、今回も、そうさせていただくことにしました。


「金属製のコインと、木皿を用意しましょう。たいへんですが、それが必要だと言うことがわかりましたので…」と、
山田さんにお伝えしたことが、その日のミーティングでの一番の成果になりました。


…という所で本日は終わります。思い出すと本当に色々なお話が出てきて、なかなか書き進むのが難しいのですが(笑)。
あと1回だけ書いて、終わりにしたいと考えております。
「パトロネージュ」は1月に一般販売できるよう進めておりますが、12月中には弊社より一定数の通信販売を行えるようにと考えています。
年末年始に遊ぶゲームに選んでいただけましたら幸いです。

パトロネージュのお話、その2。

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  • 2017/12/09 09:14 午後
  • 投稿者:


さて!先日のゲームマーケットにて無事発売させていただきました「パトロネージュ」のお話、続きを書いてまいりたいと思います。

ゲームマーケット2017春の現場で、山田さんから直接「直せます」というご回答をいただけました。
これを受けて私は「このゲームに着手せねばならないな」と決意するに至りました。
せねばならないな、というのは…、前提として、このゲームの出版が難しいということは明らかでした。

http://www.b2fgames.com/article.php?s...9211055248

先日のババンクのお話のその2辺りで、私がゲームを出版する際の判断方法について、ご紹介したことがあったかと思います。
個々の項目、細部は異なりますが、これはオリジナルゲームの出版でも同様の方法で考えます。
そこに当てはめてみると、パトロネージュというゲームが「一筋縄では商業的な勝算が見出せない」ゲームである、
という観測が出るまでには、そう時間を要しませんでした。

何と言ってもネックとなるのは「『ルネサンス』というテーマ」と「カードの枚数・種類の多さ」
そして「このゲームがもたらす面白さ、楽しさの質」の掛け合わせによる難しさでした。
この掛け合わせこそが(実の所)このゲームを傑作たらしめていると私たちは感じたわけですが、
それは、間違いなく「見過ごされ易い」タイプの作品性でした。

まず「ルネサンス」というテーマについてですが、これはボードゲームとしてスタンダードである一方、
「このテーマだったら絶対買う」という支持層が広がっている類のものではありません。
どちらかというと「ありふれている」という印象を与えてしまいかねない。
一方で、しっかりとした考証が求められ「適当に取り扱うと怪我をする」テーマであることも事実です。
つまり、有体に言えば「損の多い」テーマ設定です。

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これは枯山水にも一定は言えたことなわけですが、
枯山水については作者ご本人のテーマへの飽くなき掘り下げからゲームデザインが出発しており、
またその結果できあがったゲームの作品性はプレイヤーに好奇心を喚起させるもので、
その点で自分はあまり仕事をする必要がありませんでした。
(テーマが同時に、作品に大きな力を与える武器となっていたわけです)
だから枯山水においては私たちは「作者の理想に近づける」という仕事さえすれば良かったのです。
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商業ベースではここで「テーマの総入れ替え」といった大手術が敢行されることも、
ありえはするわけですが…、それはまた大きなリスクを伴う仕事であり、また東京ドイツゲーム賞入賞作品の出版における、
自分達が考えるマナーとも異なります。
また作者の山田大夏さん、そしてそのゲーム作りをサポートする皆さんとしても、
水準以上にしっかりとルネサンスというテーマに向き合われていて、東京ドイツゲーム賞に応募されてきた自作サンプルについても、
(そのまま製品のコンバートし難い部分もありはしたものの)整えてこられていました。

自分の中で、「さて、どうする?」という自問した結果、まず「ママダさんにお願いするのは、決まりだな…」
というのはすぐ固まってきました。…ほぼ毎回そうじゃないか、というお話はあるわけですが、
今回に関しては、是非も無くママダさんのお力が必要でした。

パトロネージュのカードは、「芸術作品のカード」と「芸術家のカード」を中心とし、150枚を超える分量を必要としました。
枚数が多いカードというと真っ先に「ドミニオン」が思い浮かびますが、ドミニオンが同種のカードを多数収録しているのに対し、
パトロネージュは一枚限りのカードは多くあり、計100種類以上の絵柄を必要とします。これがシンプルに途方も無い。
この絵柄を担当するにあたっては、「クオリティ」と「統一性」と「画風の幅」、そして「ゲーム内容への理解」を同時に伴わせ、
「作業が早く、止まらず、安定していて」、そして「変更に柔軟」なイラストレーターでなければならない…。

…書いていて改めて滅茶苦茶な話だと思います(笑)。
自分の知る限り該当する方は、ママダユースケさんしかいませんでした…、というより、
ママダさんという選択肢が無ければパトロネージュの出版は到底叶わなかったわけです。
単にイラストの腕というだけでなく、ボードゲーム自体への造詣、そして美術大学のご出身ということから来る美術への造詣という面で言っても、
ママダさんしかいないし、ママダさんならあるいは…、という、すがるような気持ちで依頼させていただきました。

加えて、自分はもう一人の方のことを思い出していました。それが、今回美術監修をご担当頂いた山中麻未さんです。
山中さんは(お知り合いということではなかったのですが)ママダさんと同じ大学のご出身で、まだ在学されていた数年前、
数回に渡ってB2Fの店舗に来店されたことがありました。
その度に数時間にわたって、私吉田、そして西山とボードゲームの話をしたのです。

山中さんは大学で芸術文化学科に在籍されていて、「一般社会への美術の普及」といったことを研究されていました。
それに伴い「卒業制作において美術を普及させる狙いを持ったボードゲームを制作したい」と考えておられました。
こういう出来心めいた話自体は、ゲーム屋をやっていると日常的に耳にしてしまうので、
私も西山も「簡単じゃないですよ。止めておかれた方が良い」という現実的かつ紋切り型な助言をしました。しかし、存外に山中さんは本気のようでした。
本気なのならこちらも本気で話さざるを得ない、…ということで、自分も(商売等々とまったく関係なく)山中さんの思いをとことん聞き、
思いつく限りの助言をし、言うべきところはとことん苦言を呈しました。
最近ボードゲームを知ったばかりの方が、大学での学問を修めたという証明に値するプレイアブルなゲームを作り、
それがまた美術の普及にも何らかの意味を持つ…、というハードルの高さに「無茶だな…」という感想を得ると同時に、
まだボードゲームが現在程には国内普及が好転していなかった段階で、ふとボードゲームの魅力に触れ、
自分の学問と本気で関連付けようという若い方がいる、という事実には、大きな嬉しさを感じたことを覚えています。

話すべきことは話した後、山中さんが店舗に姿を見せることは無くなりました。
後はあの方次第だな、と思い、自分達は仕事に戻っていきました。
会社の浮沈を賭けたボードゲーム制作に追われる日々でしたから、それ以上思い出すこともありませんでした。
そしてしばらく時が経った後、Twitter経由で以下のゲームのことを知りました。

http://asamiy024.tumblr.com/post/110263428782/

「ヴォルプスヴェーデ村と4人の芸術家たち:1894 - 1937」。
美術大学の卒業制作でボードゲームを制作した人がいたらしい、と言って、ボードゲーマーたちの間で「未知のゲーム」として噂になっていました。

自分は良い意味で、小さな驚きを感じました。「やったのか」。「作ってのけて、それで卒業したのか」と。
山中さんと話していた時、正直やり遂げるのは難しいのではないかな…、と感じていました。
別に山中さんが特別何か問題があったということではなく、それ以前に、意味のあるボードゲームを作るのは難しいからです。
それを大学の教授たちに評価されるものとして見せるというのは、難しかろうと。
そのゲームが面白いかどうかとか、それは自分にとってあまり興味の無いことでした。
それが美術の普及に役立つかどうかも、正直私たちにはそんなに重要ではない。
自分達にとっては、ゲームはあくまで楽しむもの、面白いものなので。

ただ、真剣に美術とボードゲームを結び付けた人がいたんだな。
その時自分は山中さんのことを思い出し、しっかりと憶えました。
そしてその後彼女がゲームに関わる仕事に就かれたこと、ボードゲームに携わる活動をされていることを噂に聞いて、思ったのです。

美術に関わるゲームとか、将来あるかもしれないしね、と。
第一回東京ドイツゲーム賞、さらには枯山水初版制作の修羅場の只中にありながら、
何時間も、ふと店頭に来たお客さんの話を真剣に聞いて、答えたんだから。
未来に何かしら、新たなゲーム作りの可能性になっても良いだろう…、と。


…そこから2年ほど経ち、…この、パトロネージュというわけです。
このゲームの製品化を実現する上で、「山中さん」という人材のことは、真っ先に自分の頭に上っていました。
山田さんのご意向を聞き、ママダさんに依頼を打診し、そして山中さんにご連絡を差し上げました。

ママダさんも、山中さんも、美術に関わる方であり、同時にボードゲームを愛好していらっしゃる方です。
お二人ともに、まず必要なことは一つだと考えました。
お二人に立川でのミーティングをお願いし、依頼の内容もそこそこに…、
応募時に山田さんからお送りいただいたサンプルで、パトロネージュを3人で遊びました。
お二人は「これは、面白い」と仰いました。…そうでしょうとも。そこは全く、心配していなかった(笑)。

ママダさんと山中さん、お二人のお力をいただいて、私は、このパトロネージュと言うゲームの美術的側面の魅力を高めようと考えました。
ボードゲームを愛好する、私たちにとって最高の芸術家であるママダさんの腕と。
美術を一般に普及させたいという(私達自身は持ってはいない)山中さんの知識と動機に、お力をお借りしようと。

…当然コストは高まる一方だったわけですが(笑)。自分は間違いなく必要だと考えた次第です。
リリースし終えてなお、非常に重要な決断だったと、確信しています。
このパトロネージュというゲームが、そこそこに出て、適当に通り過ぎてしまうゲームでは無く、
意味のあるゲームとして、忘れがたいものとして残る、ボードゲームとして生じるため。
その可能性のため。美しいゲームデザインに、美しい実体を伴わせたいと。

「これで、このゲームに『力』を与えることができるかもしれない」と、ようやく私は考え始めました。

パトロネージュのお話、その1。

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  • 2017/12/01 05:01 午後
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ババンクと共にゲームマーケットで新発売する予定の第2回東京ドイツゲーム賞・ニューゲームズオーダー特別賞受賞作品、
「パトロネージュ」につきまして、今週に入りようやく、弊社倉庫にて先行販売分の準備が整いました。
制作に様々な課題がありご心配おかけしたのですが、何とか!当日販売できることとなりました。
いや~、かつて無い程の難産でしたので、仕事が終わったわけでは全く無いながら、肩の荷が一つ降りた気分です。

と言っても、ババンクと異なりパトロネージュは全くの新作ゲームとなりますので、ご存じ無い方もたくさんいらっしゃることと思います。
順を追って説明してまいりたいと思います。


■第2回東京ドイツゲーム賞・ニューゲームズオーダー特別賞受賞作品

2012~13年に第1回を開催した、テンデイズゲームズさんとニューゲームズオーダーが共同開催している公募のゲームデザインコンテスト、
「東京ドイツゲーム賞」は、2016年に第2回を開催しました。
第1回についても「枯山水」「曼荼羅」と言ったゲームの出版に繋がり、私達自身嬉しい驚きをたくさん味わったのですが、
第2回については、ともすればそれを上回る衝撃がありました。
第1回の約60作の応募に対し、第2回は約40作となりましたが、応募数の減少に相反して優れた作品が非常に多く、
審査では嬉しい悲鳴が度々上がりました。
審査に当たっては、一次は書類審査、二次では応募者の皆様にお作りいただいたプロトタイプを用いての実プレイ、
これを踏まえ特に良い物を最終の三次審査にかけ、再度のテストプレイと話し合いで大賞および各賞を選出しています。

そんな中、二次審査終了の時点で、力作ぞろいの作品群の中、なお頭一つ抜きんでた評価を得たのが「パトロネージュ」でした。
平易かつ理性的なルールで1時間級、考えさせつつも楽しく熱く盛り上がる。
ルネサンス期の、歴史に名を残す芸術家や作品、メディチ家のパトロンたちをテーマに取った、王道といって良いゲームながら、
今まで見たことのあるユーロボードゲームとは言わば「哲学の違い」を感じさせるゲームデザインに、
うーんこれは凄い、と私たちは喝采の声を上げました。

現在ニューゲームズオーダーのウェブサイトにルールブックをアップロードしています。
よろしければご覧ください↓
http://www.newgamesorder.jp/games/patronage

…と言って、こちらのルールブックは本作のゲームデザインの半分でしか無いのですが。
未だ皆様にお見せしていない「もう半分」にこそ、自分達の知らないゲームデザインの力が宿っています。
それは、最終的に175枚を数えたカード・セットの内容です。



■作者、山田大夏さん

二次審査で初めて遊んだ「パトロネージュ」の出来栄えは、私にとって完全な驚き…というわけでは実はありませんでした。
それは(間接的にではありますが)作者の方の経歴を存じ上げていたからです。
「パトロネージュ」の作者山田大夏(ひろなつ)さんのご本業は「TCG(トレーディングカードゲーム)のデザイナー」です。
そう言われてみると私たちは、数多く出版されてきた国産TCGのルールを誰が作っているか、多くの場合知らないわけですが、
山田さんは国産TCGの黎明期から、20年にわたりゲームデザインで生計を立てていらしている、
つまり専業のゲームデザイナーの方、ということでした。
(B2FGamesを作る前はイエローサブマリンのTCG店舗にもいたことのある自分としては、
 「『アクエリアンエイジ』の中核デザイナーのお一人」という話を聞いた時には「えっ」と声が出ました)

西山が依然在籍していた玩具企画会社に山田さんもいらっしゃったため、西山から話を聞いておりまして、
その山田さんが「TCGとは違う、ヨーロッパスタイルのボードゲームを一度しっかりと作ってみたい」ということで、
第2回東京ドイツゲーム賞に応募していらしたということです。

「…バリバリのプロじゃないですかー!」という感想は思わず出たのですが、実の所東京ドイツゲーム賞はプロアマ不問なので。
面白いゲームをご応募いただける可能性の高い方なら大歓迎でしたので、応募をお受けした所、それがこの「パトロネージュ」でした。
間違いなく非常に高いレベルにある作品だったわけですが、沢田と私は
「このどこを切っても『熟練』というレベルの出来のゲームに大賞を贈るのは、
 (新人賞的な趣がいくらかある)東京ドイツゲーム賞としては果たしてアリなのか」
という、賞の意義を問い直すような話を、二次審査の段階で早々に始めていました。
この一点を取っても、第二回東京ドイツゲーム賞の審査は終始このゲームを中心に進んでいたのです。


■ニューゲームズオーダー特別賞

「本命、パトロネージュ」という印象が頭から離れることはありませんでしたが、二次審査では他にも数多くの多種多彩な有力作が現れました。
結果、当初予定した5作品から大幅に上回る8作を通過作とした上、私たちは最終審査に臨みました。
最終的に大賞を獲得したのは赤瀬よぐさんの「グラバー」であり、
「パトロネージュ」はニューゲームズオーダー特別賞ということになりました。
この点はYoutubeにアップロードしている最終審査の話合いで侃々諤々と話しておりますが、理由は2つで、
「最終審査でのパトロネージュのテストプレイにおける(全審査を通じて1回だけの)パフォーマンスの低下」、
そして「『グラバー』のゲームデザインの『若々しさ』を審査員が高く評価したこと」でした。
私としては、もう一つの弊社特別賞受賞作「探偵稼業」を含めこの3作は、「間違いなく自分の『責務』になる」と捉えました。
皆様のテーブルに良い形でお届けできるよう、預からせていただきましょうと。
しかし加えて「ハツデン」もあり、「六次化農村」もあり…と、
東京ドイツゲーム賞の優秀作だけで2017年の予算と日程は全埋まりと言ってよい状態になりました。
一つでも多くの作品の出版を実現すべく「ハツデン」「六次化農村」から着手し、春にはリリースをしたわけですが、
では次はどの作品の制作を…、と考えた末、「パトロネージュ」を始めよう、という決断に至りました。
直接的な理由は、最終審査時に私がこのゲームの行く末について持っていた推測と、その推測に対する回答を、
ゲームマーケット17春の現場で作者ご自身からいただけたことにありました。

最終審査の話合いで大賞が「グラバー」に決まりかけた時、私は
「パトロネージュの作者の方は、この最終審査で1度限り起きたパフォーマンスの低下を、
 あるいは完璧に『直せる』方なのではないかと想像している」
という向きのことを言ったのです。

ゲーム作りを1度でも志した方ならおわかりのことと思いますが、ゲームをほぼ完成させて、その最終形で生じた欠点と言うのは、
言うほど簡単に取り去れるものではありません。1つ直そうとすると新たに2つ3つのおかしな部分が生まれて、
その内原型を留めなくなってしまいます。
手直しを重ねるうち、「そのゲームが当初現出させようとしていたもの」が、損なわれていってしまうこともしばしばです。
しかしそれは、この方に限っては当てはまらないのではないかと。
この方は、「私たちの本業」に等しい力で、ゲームのルールと長年向き合って、生きてこられたわけなので。
それは生半可なことでも、尋常なことでもないと、私は思うのです。

上記のことは、無論山田さんの経歴からの想像だけで言ったのではありませんでした。
パトロネージュの底に潜む、尋常ではないゲーム作りへのこだわりが、審査を通じて伝わってきていたのです。
ルールをご覧いただいた方ならある程度ご想像頂けると思いますが、このゲームは最終的に運要素も小さくない、楽しくネアカなファミリーゲームです。
「なんだ運ゲーか」なんていうファーストインプレッションも、もしかしたら言われるのかもしれません。

ここで自分が申し上げたいことは、
「こういったタイプのゲームを作る為に、ここまで緻密にこだわってルール・カードのメカニクスを追求する人を見たことが無い」
ということです。
パトロネージュのメインカードには、TCGのようなテキストは無く、アイコンだけでシンプルに表現されているのです。
ほぼ言語依存の無いゲームです。ただ山田さんは、その全体と細部の両輪に、ひたすらにこだわられる。
その飽くなきこだわりが、ゲームプレイの快適さや展開の盛り上がりにダイレクトな効果を上げています。
口にしてしまえば単純です。それとなく遊んでいればまず気づかないような領域で、出来上がりが全く違うのです。
これは是非とも遊んでいただいて、ご判断いただきたい部分です。

二次審査において関係者全員が「パトロネージュ」を称賛した中、最も高く評価し敬意を表したのは、自分だったと思います。
だからこそ、最終審査においてより厳しく見るためのテストプレイをしたのです。
提出されたパトロネージュの僅かな、しかし確かな欠陥を見つけたのは、自分です。
そしてそれを一番残念に感じたのも、おそらく自分です。

だから、最終審査において、それまでの方向性を曲げてでもと、ニューゲームズオーダー特別賞を
「探偵稼業」「パトロネージュ」の二作に贈ることとさせていただいたのです。
審査以降、「パトロネージュ」と縁が無くなるようなことがあれば、「パトロネージュ」が理想的な形で出版されて、
多くの人を楽しませることに、自分が関われないこととなる。このゲームの凄さを最も明確に認識している自分こそ、
同時にそれを皆さんにお届けする適任者であると考えましたので…それはよくない。
この作品とボードゲームを愛する皆様を繋ぐには、私に担当させていただくより他は無いと、私は確信していました。

上記のように考えていましたので、ゲームマーケットで審査後初めて山田さんにお会いするや否や、挨拶もそこそこに、私は山田さんに尋ねました。
「あれは、直せますか」と。これは、私の中で強い願いを込めた問いでした。

回答はきわめてシンプルでした。

「直せます」

山田さんは、平然とした顔で即答されました。

「4つの方法があります」

-----------------------------------------------

というところで、1回切りたいと思います(笑)。
実際のゲーム作りの話に全く入っておりませんが、本作についてご判断いただけた部分があるかと思います。
続きはできれば今日もう1回書きますが、間に合わなければゲームマーケット後に書きたいと思います。
ともあれ「パトロネージュ」、心からお勧めします。
よろしくお願い致します。

仕事に直接関係のないデジタルゲームのお話、失態ついでにお届けします。

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  • 2017/11/22 10:23 午後
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ゲームマーケットまで1週間、本日はお休みいただいていたんですけれども、
先刻少々ニューゲームズオーダーのTwitterアカウントで粗相をしてしまい、たいへん失礼致しました。
…と言ってあまり多くの方がご存じないかと思うのでご説明しますと、
今般任天堂からリリースされているどうぶつの森のスマホ版を試しにプレイしていた所、
誤ってニューゲームズオーダーの公式アカウントでどうぶつの森の宣伝ツイートを流してしまったという…。
いや、非常にあせりました。二度とこういったことの無いよう気を付けます。

お詫びのついでになってしまうんですが、本日は普段しないお話を。
ご存知の方はご存知と思いますが、私テレビゲームも遊びます。
元々ぼちぼちと遊んでいたんですが、ゲーム作りの仕事をするようになってからは、
一層意識的に一般向け人気作を遊ぶようになりました。
ポケモン、モンハン、スプラトゥーン、そしてこのどうぶつの森など、ここ数年で一通りやるようになりました。
(ホントはマインクラフトもやらねばならんのでしょうが未着手です)
スマホのゲームについても、少し遅くはあったのですがポケモンGoのリリースをきっかけでやるようにしました。
第一には勿論余暇の遊びなのですが、仕事面からも気になる部分があるのは確かです。

ボードゲームはじめアナログゲームが取りあげられる時「アナログゲームはデジタルゲームと一味違う魅力がある」
という言葉が息を吐くにように繰り返されるのですが(うっかり自分で言っちゃったりもするのですが)、
ある時「それって本当にそうなのか」という一からの疑問を持たねばならないのではないかと、思い始めたのです。
具体的にはPSP版のモンハンが空前の大ブームを起こした時ですが。
あれ…4人で対面での同時プレイで、めちゃくちゃ盛り上がってるみたいですけども…。
というのが気づきの始まりでした。危機感、ということではないのですが、アラームが鳴ったような気持ちにはなりました。
認識は随時改めなければいけないよなあと。

時期としてはボードゲームの認知度が国内で徐々に高まっていた頃でしたが、一方自分の目には、
2010年頃から、一般向けデジタルゲームのギアが変わったように映りました。
収益性と言ったところでは過去の最も良かった時代に比べ苦労してるように聞こえていたわけですが、
提供されている遊びの内容で見ると、いや凄いものは凄い、突き抜け始めているなあと。
少し前まではインターネット通信搭載、と言っても、料金もお高いしサービスを受けるのも面倒だし、
うーん気にはなるけどちょっと見合わせます、という感じだったのが、DSやPSPといった携帯機の機能が上がって普及したことで、
いちはやくPCでオンラインゲームに対応していたような熱心なマニアじゃなくても「オンラインプレイ」が標準的になって。

それでも「対面ならでは!」というアナログゲームの魅力は依然あると思っていたし、それは今も思っているのですが、
ゲームの内容や環境によっては同席してないほうが気楽で良いですよね…ということも多々感じるようになり。
高性能な携帯機があれば別に出先でも、同じ空間でも遊べてしまうようになり。
冷静に見るとこれは、アナログゲームの専売特許ってことになっていた遊びが、本格的に持って行かれてるのでは…、
と思いながら一つ一つやってきたもので。
(一方、モンハン等で形成された、新たに対面で遊ぶようになったゲームグループが、
 その後アナログゲームにも目を向けてくれた、という恩恵も多々あると感じています)


「どうぶつの森」については、3DS版で初めて試してみました。
正直自分が個人的にめちゃくちゃ魅力を引かれるタイプのゲーム(…という言葉がなんか居心地悪い作品ですね)
では無かったのですが、「これこそ唯一無二!」という方がそれこそ莫大にいるものなので、
「守備範囲外、知らん知らん」という風に適当に通り過ぎて良い気はせず、「うーむ、うーむ」とうなりつつ、結構やりました。
これが多くの人の心を掴んで離さない理由…は、逆説的に私共のゲームが一定以上広がらない理由とイコールで結べるのかもしれないな、
というのが感想でした。
私は、私たちの好むタイプのボードゲームがスーパーメジャーな存在になって欲しいと思っているわけではなく、
世の中の一端に適切に存在すれば良いと思うので、その感想に、マイナスの感情はほとんどありません。
自分としては、このゲームと、このゲームが得ている幅広い支持ということについて、
考える機会があったのはただただ意味がありました。
親しい間柄で、そんなしきりに優劣競わなくてもいいですよねえ、それは、と。
他のプレイヤーからは勿論、作り手側からも、明確には何かしらを課されない。
作り手が用意した仕掛けに呼応して、自らが気のすむまで自分に課せばいいと。あるいは課さなくていいと。
自分の遊びの領域に、他者の事情で物差しが当てられないという価値、と言いましょうか。

ですから、一番好きなゲームがこれという人に、どんなボードゲームをお勧めするか?という問いは盲目的だろうと。
果たしてボードゲームをお勧めすることが適切なのかどうか?と、考えるべきだろうなあ、と思うに至ったのです。
どうぶつの森もボードゲームも、遊びですからねえ。「お好みでしたらどうぞ」というものなので。


さてそれで、今般スマホ版がリリースということで、長きにわたって「スマホゲームは出さないです」という方針を一貫していた任天堂がそれを変更して
「どうぶつの森」を投入してしまうという…。
話を聞いただけで「そんなん反則じゃあ!」という程成功が約束されているのではないかと思いました。
一プレイヤーの気持ちとしては、私向けではないに違いないので遊ぶ必要は特段無かったのですが、
どういう仕上げのものが出てくる(そしてどの程度成功する)のだろう、という意味で言うと非常に楽しみで、
今日やってみたのです。…想像しますにこれは、やっぱり既存作以上の成功が約束されているんだと思います。
(想像しているだけなのでやっぱり何もわかってないっちゃあわかってないんですが)
門外漢が初日にかじった程度なので、特に具体的なことは書かないのですが。まあ、勝ち確感が凄いとおもいました(笑)。

ただ、今回のどうぶつの森が一番人気のゲームの世界なら、私たちのゲームも、こちらはこちらで存在意義は何ら欠けずにあるかな、
という気持ちになりました。私たちは私たちで、一角に居ましょうやっぱり、と。
スプラトゥーンの時の方がよっぽど「ひいいいい」と言う悲鳴を上げましたね(笑)。
どうぶつの森と私共のゲームは、多分投げかける先の方々の求めるもの、遊びに際してのお気持ちが、
あまり似ていないのではないかと思うからです。

ところで今般の私の失態ですが、半ば「まさかな…」というところで起こしてしまったミスでございまして、
(まあ基本私こういったことに結構疎いのですが…)
私普段会社のメールとゲームのためだけの(電話も使わない)スマホを携帯しているのですが、
Twitterに関しても会社のPCでのみ書き込んでいるので、スマホにはTwitterアプリも入っていません。
仮にスマホでTwitterを使うとなるとログインをしなければならないわけですが、
どうぶつの森で「Twitterで広める」…というような所を触ったらあっさりと(そしてうっかりと)ツイートが出てしまったという…。
確かにログインしているメールのアカウントとTwitterのアカウントは連携してるのですが…。
(実際の所「アカウントの連携」というのがどういった範囲にわたっているのかが半ば理解できていないんですが…私だけでしょうか)
「Twitterログインしてないのに?ほんとに?」と思って、試してみて、ブラウザで確認してみたら、ホントにツイート出てる!ぐわっ!

いやあ、これはたいへんな仕組みだなと…。
…というところで、当世の情報拡散の手法について痛みと共に学んだところで、本日はこのへんにしたいと思います。
自分たちはこういったテクノロジーとは基本関係のない所でゲームを作っていくのだと思うので、
その分自分たちが投げかけたい範囲には何ができるのか考えていけるように。

何とか「ババンク」がリリース可能な状況が整いまして、「パトロネージュ」もそちらに向かっております。
パトロネージュは…、幾多のデジタルゲームと並び立てるものになってるんじゃないかと、私としては自負しております。
できる限り、ぎりぎりまではやりましたので、後はどうなるか。
残り10日ほどとなりましたので、随時情報をお出しできますように、引き続き取り組んでまいります。

ババンク日本語版の話、その3(最終回です)。

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  • 2017/11/14 09:02 午後
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さてババンクのお話の続きを。前回ご説明したように、色々な条件を考え合わせた上で
「直径25mm、高さ"金額"mm」の円柱型チップ、計60枚(60個)を採用したいなあ、という所まで行きました。
「満足感のある」サイズであるということ、「利便性のあるサイズ」であるということ、
そして想定している「箱に収まるサイズ」であるということ、…という条件を全部満たすのは、これじゃないかだろうかと。

ボードゲームを作る時に大切なのは、一見すると両立することが難しい、対立する諸条件が現れた時に、
「簡単に優先順位を付けてしまわない」ことだと思っています。

A. 箱サイズはもう決まってるんだからチップは小さくする
B. チップは大きくしたいんだから箱サイズを大きくする

みたいな、AかBか?というボタンを簡単に、もっと言えば安易に押してしまっては、良いモノは作れません。
「なんか上手いこと、ほうぼう良いとこ取りできないもんかな~」という諦めの悪い検討が、
イコールで魅力的な商品開発の活動ということになるのかなと思っております。

その上では、「3Dプリンタでダミーを作って確かめる」というのは、地味なようで非常に有効的でした。
両取りするために、より具体的にぎりぎりの所まで突き詰められるからです。
「できなさそう」と「できない」は分けていきたい。
「できなさそう」のフォルダの中に、「実はできる」が入っていることがあるので。

ちょっと以前から各メディアで「3Dプリンタの導入で産業の新時代到来!」みたいなことを目にしていて、
「は~科学や医療の現場で色々と活用されるってことなんですかな~(自分には関係なさそう)」という他人事な印象を持っていたんですが、
ふと使えることになったら実はとても便利でした。コロンブスの卵。
実物と同じ体積・形状のダミーを作って確かめられるという利便性を実感しました。

ちなみに西山が使っている3Dプリンタがこちら。



「3Dプリンタ買おうと思ってるんだよね」と西山に言われた時、「でもお高いんでしょう」と返したら、
「自分が買おうと思ってるのは8万円くらいだから安いもんだよ」と言われて結構びっくりした記憶があります。
へえ、意外とリーズナブルなのねえ!という感想と共に、「その価格の機種でお役に立つの?」と質問した所、
「用途次第だから、自分らの使い道だとそんな高いの要らないんですよ」と言われ、なるほどなあと。蛇の道は蛇。

で、ざざっと作ってもらったのがこちらです(実際手早くできてました)。



白い理由は特になんてことはなく西山が備えていたマテリアルを使ったからです。ちなみに中はハニカム構造、要は空洞です。
サイズ感が文字通り具体的に把握できて地味に感動しました(笑)。
と共に、ああやっぱりこのサイズ感は良い気がするな、と確認できました。
となると次は、全部でどれだけになるかということですが…。



こうなります。予想通り、最近の大箱のボードゲームでもほとんどみないガッツリ感。
これを見せたら、沢田に「ほとんど駒売ってる感じだね」と笑いながら言われました。
ババンクは2001年のゲームな訳ですが、このコンポーネントはどちらかと言えば1990年代前半の大箱の趣きです。
自分としては、こういった最近のドイツの大箱でも見ないような木製駒というのは、1つ楽しいんじゃないかな、と思いました。
ということで、試しにラーの箱に収めてみると、タイルやカード及び中敷きを工夫すれば何とか入るのではないかな…、という感じでした。

箱に収める方法については、海外製造の場合は、想定する収め方のラフをを工場に図で送り、最終的にはあちらで設計してもらいます。
加えてチップは4色が要りようなので、タンサンさんに色指定をしてもらった上タンポ印刷(木製駒に直接印刷するハンコ的な手法)
のデータを用意し、木製駒のサンプル製造を工場に依頼。

ここから(料理番組みたいですが)サンプル完成に2か月かかりまして、出来上がったのがこれです。



5を黄緑、10を橙、20を銀、50を金にしているのは、美観もあるのですが、
プレイヤーカラーの6色とかぶらせないというのが一番の理由です。
数値は黒の方が見易いのでは、ということでこちらも試作しましたが、
「元々横から見て金額を判断でき、数値記載は補助」ということなので、
タンサンさんとの協議の結果、見栄えを重視し白印字を採用しました。



全部で60個、こんな感じです。やっぱり大量!



プレイヤーの位置を表すポーンの形状、大きさは元版を踏襲してます。
復刻の時は、そこら中の寸法や仕様を適当にいじくり回してしまうと基準が無くなってしまうので、
「機能していた元版のサイズ」という所に立ち返ります。



箱にも無事収まりました(笑)。一苦労でしたが良かった。



チップやポーンをタイルの上に置くとこんな感じです。
ご覧の通り、金額と高さが合うので50ごとに積んでいくと額面が一目瞭然です。
タイルも元サイズを踏襲しています。
箱に収めるのが難しく、タイルについては若干の縮小を検討していたのですが、
やはりリスキーであると感じたため元版準拠を強行。打ち抜きタイルを止めて収めてくれた工場に大感謝です。


-----------------------------------------------

とまあ、こんな感じです。ニューゲームズオーダーのウェブサイトに、ルールのPDFをアップ致しましたので、
よろしければご覧ください。

http://www.newgamesorder.jp/games/vabanque

自分としては、ババンクを(できるだけ気分よく)手に入れられる状態を回復する上で、
自分のできることはやれたかな。と認識しております。
この前このババンクで遊んでいる風景を初めて見ましたが、ひいき目を抜きにしても、良いんではないかな、と思えました。いや~。

ババンク、誰もが知っているゲームでは無いかもしれません。
ただ大事なゲームだと思うし、遊んでいただけたら、「おお、こんなのあったのね!」と喜んでもらえるゲームだと思います。
だからこの度、もう一回頑張って箱作って、お届けします。1個1個そうしてきていますが、どうしても楽はできないようです(笑)。
元版の方が好きだなあって人はいるかもしれませんが、そういった方は元版をお持ちのことも多いと思いますし、
中古で手に入れたりも不可能ではないかと思います。
自分達としては「これはこれでアリだね」というババンクになるように、できる限りやりました!
この機会にババンクを皆さんで遊んで、楽しんでいただけたら嬉しいです。ほんとに!


…ということで、ゲーム内容のお話なんかは熱心なプレイヤーの皆さんや、ご自分でルールを読んでいただく皆様にお譲りして、
次回以降はパトロネージュのお話をしたいと思います。
あと20日を切ってきて発売について全く予断を許さぬ状況なんですが、何とか進めております(笑)。
オリジナル新作なので色々ご興味ある方いらっしゃると思うので、ご紹介して参りたいと思います。

ババンク日本語版の話、その2。

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  • 2017/11/09 09:10 午後
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数日の間が空いてしまいましたが、ババンクのお話の続きと行きましょう。
復刻するのが難しい部類に入るババンクの日本語版を、それではどうやって形にしていくのか?というお話です。
今までやっていなかったもしれませんが、ローカライズの時に私たちが何を考えているのか、
ということについて、ちょっと率直な所をお話してしまおうかと思います。

前提として、あるゲームを復刻する時に、その難度について私がどういった所を気にするかという話と、
その基準の中でババンクがどう位置づけられるかということをまずご説明しましょう。

●元ゲームの知名度、人気
●元アートワークとの距離感。変更するか否か
●内容物の「作り易さ」
●内容物の「魅力、工夫しがい、伸びしろ」
●元版製品の出来栄え
●過去の国内供給量の多寡
●ゲーム内容と価格設定のバランス
●契約の可否と条件
●現状ボードゲームを遊ぶ、あるいは近く遊び始める方々にどう受け入れられるか

項目にするとこんなことが挙げられます。ババンクはというと、ざっくりと以下の通りです。

●知名度、人気…知る人ぞ知る名作、という位置づけ。長年絶版だったため、知っている人の割合は、このタイトルの元版出版時の人気に比べ随分低いように感じる。良し悪し。
●アートワーク…なんと「フェレータ」のカサソラ・メルクルが描いていたもの。経験上、まず間違いなく元のアートは入手不可能。
●作り易さ…プラスチック製チップ60個、木製ポーン6個+紙コンポーネント。シンプルなようでチップ60個は大量。非常に厳しい。
●魅力…値打ちを感じさせる内容物はほぼチップで占められている。これの取り扱い次第。
●元版の出来栄え…アートワーク、内容物とも評価は比較的高い。元版のコンポーネントで不満を耳にしたことはほとんど無い。
●過去の供給量…知る限り他言語版は目にしたことは無く、供給量も少ない。中古価格は高い(ぱっと見た限り100ユーロ近辺)。好材料。
●内容と価格…実はがっちりとコストがかさむチップ60個に対し、ゲーム時間は1時間かからないためそう高く出来ない。難点。
●契約条件…ユーロボードゲームの普通の範囲。ニュートラル。
●どう受け入れられるか…勝負所。満場一致で大歓迎ということはないが、凄く喜んでくれるタイプのプレイヤーも十分想定できる。


大体こんな感じです。
ここから総合的に判断していくと、

●間違いなく底力のあるゲームで、リリースできればある程度勝負できる
●元版の出来は評価されていたため、元版に劣る物を作ってしまうリスクがある
●コストパフォーマンス、元版原稿の保存/確保の観点から、元版を忠実再現することはできない/すべきでない

ということになります。
大きくわけて「アートワーク」と「コンポーネント(専らチップ)」が問題になったのです。
加えて「内容物のコストと販売価格のバランスを取るのがかなり難しい」という観測があります。

少し詳しく説明しますと、これは確認したわけでは無いですが、カサソラ・メルクルは、
元より几帳面に過去の仕事のデータを管理している人ではない、ということを、
過去の『エレメンツ』『フェレータ』『ジュリエットと怪物』のローカライズの経験で知っております。
ババンクは2001年作で、カサソラ本人のゲームでも無いですから、残ってなくても何らおかしなことはない。
そしてもう1つ、チップです。元版のチップというコンポーネントは、こんな感じの物です。



言いようによっては銭湯とかで見かけそうなプラスチック製の楕円形の札なのですが、
これが手触りや質感も良く、結構使いやすいもので印象深かったのです。
私達自身も、ババンク再版に着手する上では「あのチップを再現する必要があるってことなのかなあ」とぼんやり考えていました。

しかしながら、改めて進めてみると、この「再現路線」はなかなか筋が悪いな、と思えてきました。
推測するに、元版のチップも「このゲームの製造にあたって開発した物」というよりは、
「製造現場周りで入手できるものとしてたまたまあって、『ちょうどいいじゃん』と採用したもの」だったんだと思うのです。
実際ゲームを作っていると、こういったことは現場で頻繁に起こるので、おそらくそうなんじゃないかと。

しかし、当時結構な定評があったチップなんですが、改めて良く見ると「そのものズバリ」という代物ではないなあと思い始めてしまいました。
(自分を含めた)オールドファンは「そう、これこれ」と思うとしても、それは元のババンクを知ってたり、
もっと言えば持ってたりする人の感覚に限られるのでは…、と。
これだけ多くのボードゲームが出版されてきた上での、2017年現在の大半のボードゲーマーの皆さんには
「ああ、そうなんですか」位の感想しか抱かせないんじゃないかなと。
その割にはプラスチック製ですからコストもかかりますし、極力元版に寄せていったところで
「似せたんだろうけど元の方が良いね」と言われてしまう可能性も高い。
ここまで考えて「こりゃいかんなあ」と悩みに入りました。コスト高なのに大して受けないのでは散々です。
実際は、コストを掛けてリスクを取るのだとしても、このチップを「別のもの」、さらに言えば「もっと良いもの」にしなければならない。
好みは人それぞれあるにしても「元版とは違うけど、これはこれでアリだね」という最低線は保たねばならないのだなと。

この上で自分が突破口と考えたのは2点でした。

●元のチップより「カジノらしく」する
●元のチップより「便利」にする

元のチップは定評がありましたが、これは例えばより「カジノチップ」的なものでも良いのではないかな、という発想がありました。
もう一つあったのは、「プラスチック製ではなく、木製にするという手はどうだろう」という発想です。
リアルなカジノチップか、具合の良い木製駒か…というところで思案しつつ、並行してアートワークを(カサソラに比肩するアートワークを)
依頼することにしたタンサンさんにご相談し話し合っていた所、朝戸さんから

「円柱の高さとチップの価値を比例させてみるのはどうですか?」という提案がありました。…それだ。

ババンクのチップ60枚は、

「5」チップ 24枚
「10」チップ 18枚
「20」チップ 12枚
「50」チップ 6枚

という構成だったのですが、これを

5㎜厚チップ 24枚
10㎜厚チップ 18枚
20㎜厚チップ 12枚
50㎜厚チップ 6枚

とする手。これを「カジノチップを積んでいるような円柱」に見立てる!
50mm厚って要は高さ5㎝の円柱ですから、「50㎜高」と言った方が正確な物ですが。

これのメリットは「テーブルに乗っているチップの総額が高さで一目瞭然」となることです。
元のチップと比べても、絶対的に便利。その上、十分満足感のあるコンポーネントになる。
カジノ感も出るし、最高だ!…と思ったのですが、一点大きなハードルが生じたことに、すぐ気づきました。

「でもそれ、多分めっちゃかさばるよねえ…」という問題です。

ゲームの内容とプレイ時間、加えて初版販売時に流通していた価格とのバランスから、
自分は今回のババンクについて、「上限5000円」もっと言えば「税抜4500円(税込4860円」、
つまり弊社で販売している『ラー』『さまよえるオランダ人』の価格と並べるという課題を設定していました。
『ラー』の価格に並べるということで、同時に『ラー』と同サイズの箱にする、ということを想定していたのです。

カジノチップ気分を味わうためには、円柱があんまり細くて良い訳はない(そもそも倒れやすくなってしまう)ということを考えると、
直径は20㎜…いや25㎜くらいは欲しい、のか?
直径25㎜で5㎜厚~50㎜厚の木製駒?計60個?をジップ袋に入れて、それをラーの箱に入れる?他の紙コンポーネントと一緒に?

…それ、収まるか?


と、とりあえず目の前に無い60の円柱について考えてもそうそう答えが出るわけもなく。
暗澹たる気持ちになりかけたのですが、そこでふと思い至ったのです。
製造方の西山が最近導入していじり始めていた、「3Dプリンタ」が使えるんじゃないかと。

…ということで早速西山に状況を説明すると有難いことに「多分ダミー作れるよ、出力に数日もらえれば」という話。
おお!未来っぽい(笑)!

という所で、タンサンさんとのイメージ共有も含め、3Dプリンタの実用性テストも含め、ダミーの作成に着手することになりました。
西山が導入し始めた時は「ミニチュア造形関連の実験か~」と眺めていたんですが、意外と地味な所で繋がってくるもんなのですねー。
文明文明。

ということで、次回はその結果できたチップのご紹介を(ようやく)しようと思っております。
多分次回、ババンクの話は締められまーすー!

ババンク日本語版の話、その1。

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  • 2017/11/04 08:55 午後
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先日Twitterにて第一報を出させていただいた通り、レオ・コロヴィーニとブルーノ・フェデュッティの共作によるカジノゲーム、
「ババンク」の日本語版を発売します。価格は税抜4500円(税込4860円)となります。
箱サイズは弊社の「ラー」「さまよえるオランダ人」と同じものになります。
アートワークについては、「ファブフィブ」以降弊社の復刻作を数多く手掛けていただいたタンサンさんにご担当いただきました。

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さて!「ババンク」ようやくのリリースとなります。初版は2001年、ウィニング・ムーブズ社から販売されていましたね。



毎度悩むのですが、お読みの方は、「お~ババンク、良いねえ懐かしいね」と言う方と「ババンク?知らない」
と言う方に分かれることと存じます。
少数派としては「最近ボードゲーム始めたけど、詳しい人に誘われて遊んだ!」という方や、
「ネットで調べてたらふと見つけて、興味惹かれたけどどこにも売ってないのでそのままになってた」と言う方も、
いらっしゃるかもしれませんけれども。

知らない方向けには本来ゲーム内容自体のご説明がご要りようだとは思うのですが、
程なくウェブサイトにPDFルールもアップ致しますし、ゲームマーケットで新たにお配りする弊社のカタログにも掲載しますので、
具体的な内容についてはここでは一旦他に譲ることにします。
(タイトルも特徴的ですし、入手難となって以降も根強い人気を誇るゲームですので、検索すれば情報は得られることと思います)
この出版についてのポイントを整理してお届けしたいと思います。
デザイナーズ・ノートならぬパブリッシャーズ・ノートといったようなことを、今回は書こうかと。


さて、このババンクの復刻、まず何といっても…難産でしたねえ。
絶版名作の復刻を数多く手がけて参りました結果、「ニーズが高く復刻し易く効果が高い」タイトル、
まあつまり可能な所から着手してきた分、「バザリ」「キャント・ストップ」あたりからは、
着手してから複数年単位の時間が経過するものが出てきており、ババンクもそういった内の一つです。
遡りますと、権利所在を探し当てて(共作というところが難しかった一因です)、色よい回答を得たのが2014年の終わりごろでした。
3年かかってしまった計算になります(笑)。
当時は枯山水の初版を発売する直前ですから、このゲームの出版自体が難しいというだけでなく、
私自身の余裕と、それ以上にニューゲームズオーダーの資金繰りに全く余裕が生じなかった、
ということも時間がかかった大きな理由です。

私共の手元では、ゲーム出版は、「電撃的に契約から出版に至るもの」と「非常に長い時間を要するもの」に分かれる傾向があります。
スピード感のある出版の実現は、様々な点から、それ自体に価値があります。
「時流に乗る」と言いましょうか。「このゲームを今お届けすれば、きっと皆喜ぶはず」という、確信を感じる瞬間があります。
その時には、何よりも「すぐにお届けする」というのが第一の目標になります。
当然ながらしっかりとした製品にするという一線は守らなければならないですし、
急ぎながら合格点を出すというのはそれ自体骨の折れる仕事ではありますが、
「何故このゲームをリリースするのか」という部分での悩みが生じません。
文化的に意義があって、きっと皆が歓迎する、収益が上がるプロジェクトならば、これは良いことずくめです。

一方、その価値について尋ねれば「名作」であると誰もが認めるにもかかわらず、
そういった流れには乗りにくいゲームというのもまた、数多く存在します。
こういったゲームについては、「どうすれば商業的に形にできるのか」という、力を加えるための構想を必要とします。
文化的な価値と商業的な価値を共存させるうえで、「何かしらの+αが無ければ、動きが取れない」ということなのです。
これは単純な気分の問題ではなくて、「持ち駒が足りない」と言いますか、気合一発着手してみても、制作が途中で推進力を失ってしまいます。
私達が多くのゲームを同時に取り扱う中では必然的にプライオリティが下がり、労力や予算の配分が後回しになってしまうのです。

2015年には権利の取得に進み(これ自体には大きな意義があると思いますので、「やった!」という手ごたえはありました)、
しかしながら様々な主力製品の取り扱いに追われ、具体的な着手には一定の時間を要しました。
2016年にはうちうちにはタンサンさんに打診をし、2017年の初頭に具体的な制作に着手しました。
しかし前述の通りの状況のため、タンサンさんも私達も思うままに制作を進めることはできませんでした。
残念ながらやはり、推進力が不足していたのです。

ただそんな中でも「2017年中には出版しなければならない」、という風に動けたのは、
何のことは無く権利者サイドとの契約にある出版時限が2017年いっぱいと迫っていたためです(笑)。
本格的に締切、という部分と、2016年を切り抜けてある程度の安定を得たニューゲームズオーダーの環境が功を奏し、
いよいよ本腰据えて考えねばならないぞ、と机の真ん中にババンクを持ってくることができました。


一旦色々飛ばすのですが、タンサンさんとお話し合いしている中で、突破口になるのはコンポーネントだろうという結論に達しました。
内容物の中でも、ババンクの中核にある「チップ」について考えてみようか、という話となったのです。


…という所で長いので、本題にまだ入ってないですが続きは次回にします。
うーん、パトロネージュの話がたくさんあってたいへんだと思っていたのですが、ババンクも掘り起こしてしまうと大概ですね(笑)。
今回のような前提を受けて、ババンクをこんな感じにしましたよ、という話を次回はしたいと思いますー。




「ババンク」「パトロネージュ」の前置き。

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  • 2017/11/03 07:52 午後
  • 投稿者:
さて!久しぶりに本腰入れてブログを書く時間が到来したようです。
昨日、ゲームマーケット2017秋に向け発売を予定しているボードゲーム2種、「ババンク」「パトロネージュ」について、
ニューゲームズオーダーのTwitterにて発表させていただきました。

いや~。ババンクは製造完了にまで漕ぎ着けているんですが、パトロネージュについては未だ全く予断を許さない製造スケジュールのため、
「ちょっとまだ発表待ってー!」と叫びたい状況です。パトロネージュ、本当に出るのかな(笑)。
…ということなんですが、2017秋のパンフレットのカットには2つの画像を載せていましたので、
ここは覚悟を決めて、発表することにしました。

2つのゲーム、特にご説明することの多いパトロネージュに関しては近日中にこちらのブログで詳しく書いていきたいと思いますが、
その前に、現在の私達、ニューゲームズオーダーの立ち位置について確認していこうと思います。

当ブログや、私吉田の口頭では折に触れ繰り返し説明して参りましたが、2012年~2016年の5年間は、
ニューゲームズオーダーにとっての1つの期間と位置付けてきました。それは言わばニューゲームズオーダーが、

「国内コミュニティの内外にメリットをもたらす継続可能なボードゲームパブリッシャーとして存在を始められるかどうか」

を問う5年間でした。これは明確な意図をもって2012年の春ゲームマーケット(ファブフィブを発売した回ですね)に開始し、
その時点で5年間で完了させるという目標を設定していました。目標と言う以上に願望でもあったわけですが(笑)。
なかなかの紆余曲折を経たとは言え、結果としてはちょうど5年間で一つの形にできたという自己評価を、今はしています。
実現性ということを考え出す前の段階で、「念ずる」というのは大切だったんだなあと、改めて感じています。


さて、それでは何故、私達は前述のような目標を設定したのか。
それは何より、「私達が存在してほしい主体が存在しなかったから、自分たち自身で担当するより他無かった」ためです。
これは私以上に、22年前に私をカタンに誘った沢田が常々述べることですが。
「ボードゲーム、こういう風に持ってった方が絶対良いと思うんだけど…そう転がらないんだなあ(不思議)」という気持ちは、
学生の頃から今もって変わらない所ではあります。
正確には今も昔も、部分的には、他の心ある皆さんにやっていただけて有難ーい、という事柄も多々ありますが、
じゃあもう自分達全然動かなくてもいいかな、と思えるかというとそういうことは全くなく、
引き続き「やらにゃなあ」という事柄が山積している状況です。

誤解されがちですが、私は「ボードゲームをより多くの人が遊ぶ程に望ましい」と無条件に考えているわけではありません。
2017年の国内ボードゲーム状況を見るに、日本におけるユーロボードゲームに商業の風を吹き込んだ主犯格の1人と自分が見なされるだろう、
という認識は大いにありますが、それは「ボードゲームは存外良いビジネスになるのだぜー、はっはっは」という気持ちから行ったことでは、
まあ全くありませんでした。

私が仕事として始める前の段階では、商業的な顕在需要ということで言えばボードゲームに関してはほとんど無い、求められてない、
といって良い状況だったわけですが、ボードゲームが持つ価値について少し早く知った人間の一人である私は、
「潜在需要ということにまで目をやると、圧倒的な供給不足なのではないか…?」と感じずにはいられなかったのです。
顕在化していない需要に対して供給を先に始めて需要の顕在化を喚起する、というやり方で2006年にB2Fゲームズを始めましたから、
当時はなかなかのうつけ者扱いをされたものなんですが、10年間でその誤解は何とか解けたかなあ、という格好です。

自分は、世の中の一角に、身の丈ちょうどな形で、幸せな形でボードゲームが(も)存在したら良いんじゃないかなあ、と思ったので。
ボードゲームを以前から愛好し続けてきた方や、新たに興味を持った方が、よりすんなりとボードゲームの楽しさを共有できる状況を作りたい、
と言う方に重点を置いてきました。
その状況を作ることが、「今はボードゲームを知らないけれど、今後ボードゲームに出会って幸せを得うる人たち」に気づいてもらう余裕を生み出すだろうと。
必要以上の拡大を性急に志向する必要は本来なくて、気長にそこにあったら良いな、と。

しかしながら、私たち(や国内のボードゲームに関わってこられた皆さん)が現在のような取り組みを始める前には、
ボードゲームは、そこに踏みとどまることすらも至難な状況でした。
今となっては当たり前に手に入るようなボードゲーム環境(つまり遊びが継続可能な環境)も実現されていたとは言い難く、
吹けば飛んで散り散りになるような状態。これは問題だと、自分は真剣に捉えていました。
とりわけ私達が力を注いだことと言えば絶版名作の復刻、安定供給という所が分かり易いかと思います。
面白いゲームが入手できる状況が保たれる、というのは、ジャンルの継続にとっては一番手早い前提条件だと考えたのです。
ですから、特に2012年からはここに本腰を入れ、リスクは感じながらも絶版復刻のプロジェクトを連打し、
商業として継続可能な地点までの収益化を目指してきました。

2016年の終わりには約50タイトルのリリースを実現し、自分の中で「一旦ここまで」という区切りを付け、
2017年に入ってからはアクセルベタ踏みを止めました。少なくとも、ここを一つのセーブポイントと設定しようと。
ニューゲームズオーダーが、「無茶しなくても続く会社」となれたのかどうか、確認するフェイズに入りました。

2017年も暮れに近づき、ここ半年余り自社の推移を観測していて、「うん、成立した」という結論を、この数か月で出しました。
継続的に供給しているタイトルが堅調に売れていっているということは、増加傾向にある、
「今度の休みにでも、ボードゲームを遊んでみようかな」という皆様のお役に立ち続けていることと捉えられるからです。


以上のことは非常に喜ばしいことですが、それは同時に、私達の今後に新たな課題を突き付けてもいます。
「じゃあ何故これ以上、新規タイトルをリリースする必要があるのか?」ということです。
過去5年間はあった「ボードゲーム商業成立、継続のため」という大義名分は、今は後退したのです。
私達は、自ら創り上げたボードゲームを世に問いたい作者本人ではなく、ボードゲームの価値を、
ご希望の皆様にお引渡しして収益を上げる企業ですので、
「もう十分に、遊びきれない程のボードゲームが押し入れにも売り場にもあるんだけど…」という状況では、
さらなるゲームを出す意義は、大きく薄れかねないのです。


とは言え、心の一方には。
「いやー、どうしても、どうしても!出したいゲームがもう一つあるんですわー」という気持ちがあります。
「まだあの傑作を出してないじゃないか、ニューゲームズオーダーは!」という思いや。
東京ドイツゲーム賞を通じて、「こんなすごいゲームを作る人がまだいるんだー!」という発見は。
一つ一つのゲームのことを思い出すと、わくわくする心が呼び覚まされるのです。
このゲーム出したら、きっと皆、喜ぶぞー!と…。

だから。やっぱりまた新たに、ゲームを出そうと思うのです。ただ前述の通りですから。
今までも適当にゲームを出してきたことは一切無いわけですが(そもそも適当だと出せないのですが)、
今まで以上に、高いハードルを越えた上で、ゲームを出していこう。という思いの中で、今年はゲームを作ってきました。


…嬉しいのはね。
新たにゲームを作ろうとすると、相変わらず、めっちゃキツイです(笑)。
西山と二人、最近口をついて出るのは「こんだけバカ程やってきたのに、ゲーム作りって何でこんなしんどいんだろ…」
というフレーズです。
ババンクも。パトロネージュも。めっちゃキツかった…、というかパトロネージュは現在進行形でキツイ(笑)。本気ヤバイ。

何せ私ども結構合理主義者なので、その私達がここまでキツイということは、それだけたいそう価値のあるものを皆様に
お届けしようとしてるってことなんじゃないかな…、という、手がかりになってる所がございます。
わかんないんだけどね。みんな、楽しんでくれるかなあ。楽しんでくれたらいいなあ。
売れたらいいなあ。ええ。


ということで、次回ゲームマーケットまで1か月を切ったただ今から、おいおいとお話していこうと思います。
おそらくは、ある程度発売に自信のあるババンクから。
パトロネージュは間に合うかどうか予断を許さなすぎるので、状況が好転するたびに適宜お話してくような気がしてます。
待っててくださーいね(笑)。